2018年2月21日水曜日

漆喰貝層有無別石器数統計の再集計

大膳野南貝塚後期集落の出土物による竪穴住居検討 29

「後世の削平」影響を加味して竪穴住居出土石器数(石器合計数)を再集計してみました。

1 「後世の削平」影響を加味しないこれまでの石器数統計

漆喰貝層有無別石器数(全竪穴住居対象)
漆喰貝層有竪穴住居と漆喰貝層無竪穴住居では石器数平均値が7倍近くの開きとなり異常な感じを受けます。

漆喰貝層有無別竪穴住居分布(全竪穴住居対象)

2 「後世の削平」影響を加味した石器数統計(再集計)

漆喰貝層有無別石器数(覆土層有竪穴住居対象)
漆喰貝層有竪穴住居と漆喰貝層無竪穴住居では石器数の平均値は3.4倍近くの開きに縮まります。

漆喰貝層有無別竪穴住居分布(覆土層有竪穴住居対象)

3 考察
「後世の削平」により覆土層が無くなった竪穴住居はほとんど石器出土がありませんが、その値はその遺構が持っていた本来の石器数を示すものではありませんから、それを統計の母数に含めると間違った統計になります。
その間違った統計が1です。

「後世の削平」により覆土層が無くなった竪穴住居を除いて、覆土層が有る(一部残った)竪穴住居だけを対象に石器数統計を再集計したものが2です。
この統計で石器数平均値をみると漆喰貝層有竪穴住居が12.7、漆喰貝層無竪穴住居が3.7となり約3.4倍の開きのある関係になります。
漆喰貝層有竪穴住居の石器数平均値はサンプル数が多く信頼できる(意味のある検討ができる)と考えます。ところが漆喰貝層無竪穴住居はその多くが覆土層無竪穴住居としてこの統計から除外されていてサンプル数が少なく信頼性が落ちます。
また、具体的にみると台地崖(急斜面)の竪穴住居が5軒もふくまれています。これらの竪穴住居は斜面林管理などに関わる可能性のあるもので、台地面の竪穴住居よりも社会ランクが低いことが想定されます。石器数は竪穴住居廃絶祭祀の規模や回数に比例すると考えられますから、台地崖(急斜面)の竪穴住居は最初から台地面のものより石器数が少ないと想定できます。従って、漆喰貝層無竪穴住居の石器数平均値は本来の値と比べて小さくなっている可能性が濃厚と想定します。

このような想定から、漆喰貝層有竪穴住居の石器数が多く、漆喰貝層無竪穴住居の石器数が少ないという見かけの統計がそのまま漆喰貝層有無別竪穴住居の特性であると確実に判断できる状況にはないと考えます。
なお、集落創始期の竪穴住居は石器数がその後の時期より特段に多いという着目すべきデータがあります。2018.02.06記事「集落創始期は狩猟と漁労の二股であった 大膳野南貝塚後期集落」参照
その集落創始期の竪穴住居で覆土層有で漆喰貝層無竪穴住居のサンプルが少ないので(1例のみ)漆喰貝層有竪穴住居の石器数が漆喰貝層無竪穴住居の石器数より見かけ上多くなっている可能性があります。
現段階では、見かけの統計数値は脇に置いて、漆喰貝層有竪穴住居と漆喰貝層無竪穴住居の石器数平均値の間には有意な差は無いかもしれないと想像して、検討を進めることにします。

2018年2月19日月曜日

漆喰貝層有無別中テン箱数統計の再集計

大膳野南貝塚後期集落の出土物による竪穴住居検討 28

「後世の削平」影響を加味して中テン箱数統計を再集計してみました。

1 「後世の削平」影響を加味しないこれまでの中テン箱数統計

漆喰貝層有無別中テン箱数(全竪穴住居対象)
漆喰貝層有竪穴住居と漆喰貝層無竪穴住居では中テン箱数の平均値が10倍近くなり、異常です。

漆喰貝層有無別竪穴住居分布(全竪穴住居対象)

2 「後世の削平」影響を加味した中テン箱数統計(再集計)

漆喰貝層有無別中テン箱数(覆土層有竪穴住居対象)
漆喰貝層有竪穴住居と漆喰貝層無竪穴住居では中テン箱数の平均値は倍半分の関係になります。

漆喰貝層有無別竪穴住居分布(覆土層有竪穴住居対象)

3 考察
「後世の削平」により覆土層が無くなった竪穴住居はほとんど中テン箱数がありませんが、その値は本来の中テン箱数を示すものではありませんからそれを統計の母数に含めると間違った統計になります。
その間違った統計が1です。

「後世の削平」により覆土層が無くなった竪穴住居を除いて、覆土層が有る(一部残った)竪穴住居だけを対象に中テン箱数統計を再集計したものが2です。
この統計で中テン箱数平均値をみると漆喰貝層有竪穴住居が2.7、漆喰貝層無竪穴住居が1.5となり倍半分の関係に近くなります。
漆喰貝層有竪穴住居はその数が多く平均値は信頼できます。ところが漆喰貝層無竪穴住居はその多くが覆土層無竪穴住居としてこの統計から除外されていてサンプル数が少なく信頼性が落ちます。
また、具体的にみると台地崖(急斜面)の竪穴住居が5軒もふくまれています。これらの竪穴住居は斜面林管理などに関わる可能性のあるもので、台地面の竪穴住居よりも社会ランクが低いことが想定されます。中テン箱数は竪穴住居廃絶祭祀の規模や回数に比例すると考えられますから、台地崖(急斜面)の竪穴住居は最初から台地面のものより中テン箱数が少ないと想定できます。従って、漆喰貝層無竪穴住居の中テン箱平均値は本来の値と比べて小さくなっている可能性が濃厚と想定します。

このような想定から、漆喰貝層有竪穴住居の中テン箱数が多く、漆喰貝層無竪穴住居の中テン箱数が少ないという捉え方が確実に判断できる状況にはないと考えます。
現段階では、見かけの統計数値は脇に置いて、漆喰貝層有竪穴住居と漆喰貝層無竪穴住居の中テン箱数平均値の間には有意な差は無いと仮定することにします。

2018年2月18日日曜日

出土物統計の不適切考察記事について

大膳野南貝塚後期集落の出土物による竪穴住居検討 27

「後世の削平」が結果として強選択的に働いた結果、漆喰貝層無竪穴住居の出土物が異常に少なく、漆喰貝層有竪穴住居の出土物が多いことに気が付きました。

これまで検討してきた中テン箱、石器、獣骨の統計の竪穴住居漆喰貝層有無別統計の考察の多くの部分が不適切なものであることに気が付きました。

また出土物時期別統計も覆土層有竪穴住居(遺構に遺物が残っている可能性のある竪穴住居)の数が時期別にアンバランスであることを確かめていませんでしたから不適切であったところが多くなっていると考えるようになりました。

参考 時期別漆喰貝層有無別 覆土層有竪穴住居軒数
母数(遺構に遺物が残っている可能性のある竪穴住居)の数が0、1、2のものが多く時期別比較が困難であることがこのグラフから判ります。

参考 時期別漆喰貝層有無別 覆土層無竪穴住居軒数
そもそも遺構に遺物が残っている可能性がほとんどない竪穴住居の軒数を示しています。

参考 時期別竪穴住居数
このグラフは大いに意味のある重要なグラフです。竪穴住居そのものの統計や分布を検討した結果からは重要な新知見が生れています。
しかしこのグラフを元に出土物の統計を作ったことが結果として不適切であり、その考察において必然的に間違いを生み出しました。

2017.11.29記事「大膳野南貝塚学習の再開」から2018.02.17記事「「後世の削平」が強選択的に働いた理由」までの50記事を読み直し、次の23記事に出土物統計の不適切考察がありましたので確認しておきます。

中テン箱、石器、獣骨関連統計に関する不適切考察記事

発掘調査報告書収録データの統計を作成し、その分析をしていく中で合理的な解釈ができない極端な数値に直面し、アーダコーダと苦悶しているなかで「後世の削平」の強選択性に気が付いたのですから、学習の質を1段階確実にレベルアップできたことになります。

多くの不適切考察を含む記事(間違い)を肥やしにして今後の学習の質を高めていくことにします。

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不適切考察記事に関する対応
中テン箱、石器、獣骨などの出土物に関する検討が進行中であり、今後さらに自分の認識が向上すると思います。従って現時点で過去記事を訂正すると近い将来さらに再訂正が必要になる可能性もあります。従って過去記事は自分の学習記録そのものとして存置します。
なお、学習終了時点で学習結果とりまとめ(論説作成)を行い、自分の最終考察結果を公表することにします。

2018年2月17日土曜日

「後世の削平」が強選択的に働いた理由

大膳野南貝塚後期集落の出土物による竪穴住居検討 26

2018.02.15記事「「後世の削平」の影響が強く選択的に働いていることに気が付く」で漆喰貝層無竪穴住居に強選択的に「後世の削平」が働き、出土物が異常に少ない状況が生まれたことに気が付きました。この記事ではその理由を大局的に考えてみました。

1 覆土層一部残存竪穴住居と覆土層無竪穴住居の分布

覆土層一部残存竪穴住居(ブルー)と覆土層無竪穴住居(ベージュ)の分布

2 思考補助図の作成
覆土層一部残存竪穴住居と覆土層無竪穴住居のそれぞれの分布の重なり具合を大局的直観的に把握するための思考補助図としてそれぞれのバッファ図(距離5m)を作ってみました。竪穴住居から5m圏の土地は竪穴住居が受けた影響と同じ影響を受けたと仮想する図です。

思考補助図 覆土層一部残存竪穴住居のバッファ図(距離5m)

思考補助図 覆土層無竪穴住居のバッファ図(距離5m)

思考補助図 覆土層一部残存竪穴住居のバッファ図(距離5m)と覆土層無竪穴住居のバッファ図(距離5m)のオーバーレイ図

3 考察
覆土層無竪穴住居は台地面全域に分布していると捉えることができます。台地面全域が「後世の削平」の影響を受けたといえます。
ただし台地崖(急斜面)には覆土層無竪穴住居はありませんから覆土層をほとんど全て除去あるいは攪乱するという「後世の削平」は台地面だけであったことが判ります。

一方、覆土層一部残存竪穴住居は殆どが3つの貝層及びその近隣に分布しています。
これは耕作等の「後世の削平」が行われた際、貝層の存在が削平活動に対して物理的な抵抗となったためであると考えます。3つの貝層とその周辺には純貝層だけでなく破砕された貝殻と土が混ぜわさった混貝土層が広がり、通常の土より硬かったと想定できます。
覆土層一部残存竪穴住居はこのほか台地崖(急斜面)に分布していて、ここでは地形条件から台地面のような削平活動は無かったようですが、別の条件(斜面浸食等)により竪穴住居の一部が壊されています。

以上の大局的考察をまとめると次のようなります。
1 台地面の全域が「後世の削平」の対象となり、そこに存在した漆喰貝層無竪穴住居はほとんど全て覆土層が失われ、出土物は異常に少なくなった。
2 漆喰貝層有竪穴住居は台地面に存在し「後世の削平」の対象となったにもかかわらず、貝層が被覆していて、それが物理的抵抗力を持っていたため覆土層一部残存竪穴住居となったものが多い。従って出土物が多い竪穴住居が多い。
3 台地崖(急斜面)には漆喰貝層有竪穴住居は存在しないけれども漆喰貝層無竪穴住居は存在する。この地形の竪穴住居は覆土層一部残存竪穴住居となっている。

この考察が正しければ、漆喰貝層有竪穴住居と漆喰貝層無竪穴住居の出土物の統計的比較はかなり無理であると考えざるを得ません。
統計的比較ではなく、漆喰貝層無竪穴住居でもたまたま貝層に覆われたもの(例 J88号住)など断片的個別情報から漆喰貝層無竪穴住居の特性を類推する検討が重要になりそうです。

また、次のような今後の検討課題が浮かび上がりました。
1 「後世の削平」の具体的イメージ
耕作か?、いつごろか? 除去された覆土層はどこに移動したか?
2 縄文時代地形(貝層形成前と後の地形)の復元
発掘調査時点の地形測量結果と1960年代測量図地形がかなり異なります。縄文時代地形(貝層形成前と後の地形)のイメージを正確に復元して、それと竪穴住居分布との関係を精密に考察する必要があります。
3 貝層分布の検討
発掘調査報告書掲載貝層分布図(南貝層、北貝層、西貝層)は一定の基準で貝層分布を描いた1例であり、絶対的なものではないと考えます。もっと広く混貝土層が広がっていたようです。発掘調査報告書の遺構別記述や発掘状況写真等から貝層分布のイメージを検討してみます。
4 混貝土層の意味
貝殻を破砕してそれを土と混ぜて意図的に作った混貝土を竪穴住居覆土層や貝層形成に使ったようです。その意味について考察することが大膳野南貝塚集落の検討に大切です。

2018年2月15日木曜日

「後世の削平」の影響が強く選択的に働いていることに気が付く

大膳野南貝塚後期集落の出土物による竪穴住居検討 25

漆喰貝層有無別に竪穴住居を観察すると出土物のみならず空間分布も全く異なり、それが2集団の共存であると推察しました。
しかし出土物の違いはあまりに極端であり、極端すぎて穏当な解釈やストーリーが浮かびません。そのような中で、もしかしたら「後世の削平」の影響が強く選択的に働いているのではないかと気がつきました。
2018.02.14記事「竪穴住居の漆喰貝層有無別検討に関する考察メモ」参照
早速、後世の削平について発掘調査報告書の記載と断面図等を93竪穴住居全部について読み返しました。
発掘調査報告書の記述から住居壁や覆土層の一部が残存している竪穴住居と住居壁と覆土層の双方が無し(ほとんど無し)の竪穴住居に区分できることが判りました。
その結果を次に示します。

1 住居壁や覆土層の一部が残存している竪穴住居

覆土層一部残存竪穴住居の分布
大膳野南貝塚後期集落では竪穴住居が完全な姿で残っている例は皆無です。覆土層が残っている竪穴住居でも全て後世の削平や攪乱、あるいは重複の影響を受けています。それもほとんどが大幅な影響を受けています。
その分布が上記地図であり、漆喰貝層有竪穴住居は貝塚円環構造に沿っています。
貝塚(南貝層、北貝層、西貝層)の存在が後世の削平から地下の竪穴住居を守ったように考えることが出来そうです。
漆喰貝層無竪穴住居は南側谷津斜面に集中していて、台地面のものはほとんどありません。谷津斜面の竪穴住居は恐らく生業の場としての斜面林の管理という出先的竪穴住居であると想定され、集落本体の漆喰貝層無竪穴住居ではないようです。
従って、漆喰貝層無竪穴住居は極めて強く、選択的に「後世の削平」の影響を受けていると考えられます。

2 住居壁や覆土層が無い竪穴住居 

覆土層無竪穴住居の分布
貝層分布域は弱まりますが、台地面に分布する竪穴住居の殆んどが後世の削平の影響を受けて覆土層がありません。つまり竪穴住居の内部に置かれた遺物が後世に消失したということです。
貝層分布域を除く台地面の分布する竪穴住居のほとんどは漆喰貝層無竪穴住居ですから、後世の削平の影響は強く選択的に漆喰貝層無竪穴住居に働いたといえます。

参考 全竪穴住居の分布

3 統計
この関係の統計をグラフ化すると次のようになります。

漆喰貝層有無別覆土層残存有無別 竪穴住居軒数

4 考察
これまで、漆喰貝層有竪穴住居は出土物が多く漆喰貝層無竪穴住居が少ないことの解釈として漆喰貝層有竪穴住居は豊かで優位であり、漆喰貝層無竪穴住居は著しく貧しく劣位であるとイメージしてきました。
このイメージは強い歪みのあるデータから導き出したものであることが確認できました。
データの強い歪みをどれだけ補正できるか、思い通りことはできないかもしれませんが、いずれにしても再考察して大幅に集落イメージを改変することにします。
漆喰貝層有集団と漆喰貝層無集団が漁撈と主食確保という別生業で協働していたかもしれないと空想できるようになりました。

2018年2月14日水曜日

竪穴住居の漆喰貝層有無別検討に関する考察メモ

大膳野南貝塚後期集落の出土物による竪穴住居検討 24

これまでの検討で、竪穴住居を漆喰貝層有無別に区分して遺構や出土物等の指標を整理するとその違いが際立ちます。あたかもメイン生業が異なる2つの集団、つまり竪穴住居に漆喰と貝殻や貝製品を残す集団と漆喰と貝殻・貝製品を全く残さない集団が1つの集落に混在します。そして漆喰貝層有竪穴住居群の分布は円環構造をなし、漆喰貝層無竪穴住居群は円環構造と無関係に分布します。

この2つの集団と見えるものが本当に生業や出自にかかわるような別集団であるのか、また2つの集団の関係がどのようなものなのか疑問が湧き、その疑問を解くべく躍起になっています。
しかしこれまで漆喰貝層有無別に中テン箱数、石器数、獣骨数を検討してきて、ますます2集団の際立つ差異を把握できてきていますがその関係は謎です。

そこでこの記事では漆喰貝層有無別指標整理作業から離れて、2集団の差異についてその意味を中間的に考察して、今後の検討方向を探る参考にするためにメモしました。

1 貝層の存在が出土物多寡要因になっていないか?
出土物の多い竪穴住居は南貝層と北貝層付近に集中しています。このことから貝層に覆われた竪穴住居は後世の削平を受けにくく、そのために出土物が多く、貝層に覆われていていない竪穴住居は後世の削平を受けやすく、そのために出土物が少ないという現象が存在するかどうか確かめる必要があります。
具体的には貝層に覆われない地区と貝層の覆われた地区の削平の受けやすさ等を比較をする必要があります。

漆喰貝層無竪穴住居からの出土物がとても貧弱であり、それを持って漆喰貝層無竪穴住居は「貧しかった」と判断していますが、この考えに大きなバイアスが働いているのかないのか検証する必要があります。

2 漆喰貝層有竪穴住居と漆喰貝層無竪穴住居の重複関係はあるか?
竪穴住居の重複関係が各所で見られますが漆喰貝層有竪穴住居と漆喰貝層無竪穴住居の重複関係を調べれば漆喰貝層有竪穴住居群と漆喰貝層無竪穴住居群の関係性のヒントが得られるかもしれません。
ざっと地図を見ると重複は漆喰貝層有竪穴住居の間あるいは漆喰貝層無竪穴住居の間で見られるものが多く、次いで漆喰貝層無竪穴住居を漆喰貝層有竪穴住居が切るものが多いようです。その意味がわかるかどうか検討します。
重複が漆喰貝層有竪穴住居の間あるいは漆喰貝層無竪穴住居の間で見られるものが多いことから漆喰貝層有竪穴住居家族と漆喰貝層無竪穴住居家族はそれぞれ同じ場所に代々少しずつ場所を変えて住居を構えたようです。そうならば、2つの異なる集団が1つの集落に同居していて、お互いに侵害しない(できない)関係性があったと言えるかもしれません。2つの集団がそれぞれ既得土地所有権を確保していたのかもしれません。

漆喰貝層有竪穴住居と漆喰貝層無竪穴住居の分布
漆喰貝層有竪穴住居…青、漆喰貝層無竪穴住居…ベージュ

3 漆喰貝層無竪穴住居の分布は台地西斜面、台地面、台地南斜面の3つに区分することに意義があるのではないか?
漆喰貝層有竪穴住居の分布は円環構造として捉えることができます。
漆喰貝層無竪穴住居の分布はその見かけの平面分布形状ではなく、地形特性(斜面と台地面)で分けて捉えるとその生業と結びつけて考えることが可能ではないかと直観します。
漆喰貝層無竪穴住居では漆喰貝層有竪穴住居と異なり谷津斜面下部までその分布が及びます。ここに漆喰貝層無竪穴住居の生業のヒントがあるような気がします。斜面林を生業の場(の一部)にしていたと判断できそうです。

地形区分

4 漆喰貝層無竪穴住居の台地中央面における小円環構造にも着目する
漆喰貝層無竪穴住居の台地中央面における小円環構造にも着目する必要があると考えます。漆喰貝層無竪穴住居群独自の構造形成が存在していたとすれば、漆喰貝層無竪穴住居群は漆喰貝層有竪穴住居群とは明らかに異なる集団であると捉えることができます。

2018年2月13日火曜日

分析作業メモ3 獣骨数の分布

大膳野南貝塚後期集落の出土物による竪穴住居検討 23

2018.02.11記事「分析作業メモ 中テン箱数の分布」を出発点にして中テン箱数、石器数と指標について順次漆喰貝層有無別に立体グラフで観察しています。この記事では獣骨数について観察します。

1 竪穴住居別獣骨数の分布

漆喰貝層有竪穴住居の獣骨数 1

参考 漆喰貝層無竪穴住居の獣骨数 1
グラフにおける漆喰貝層無竪穴住居の獣骨数はきわめて少数であり、漆喰貝層有竪穴住居と同じスケールで表現できません。そのため漆喰貝層無竪穴住居の獣骨数の表現は漆喰貝層有竪穴住居の10倍のスケールにして参考として表現しています。

漆喰貝層有、無竪穴住居の獣骨数 1
漆喰貝層無竪穴住居の表示は漆喰貝層有竪穴住居の10倍です。

漆喰貝層有竪穴住居の獣骨数 2

参考 漆喰貝層無竪穴住居の獣骨数 2
グラフにおける漆喰貝層無竪穴住居の獣骨数はきわめて少数であり、漆喰貝層有竪穴住居と同じスケールで表現できません。そのため漆喰貝層無竪穴住居の獣骨数の表現は漆喰貝層有竪穴住居の10倍のスケールにして参考として表現しています。

漆喰貝層有、無竪穴住居の獣骨数 2
漆喰貝層無竪穴住居の表示は漆喰貝層有竪穴住居の10倍です。

2 考察
2-1 獣骨出土の意味
獣骨が多量に出土する竪穴住居は漆喰貝層有竪穴住居にかぎられています。獣骨数が100以上出土する竪穴住居は9軒でありそのうち7軒が廃屋墓または人骨が出土し廃屋墓の可能性が濃厚な竪穴住居です。2018.01.12記事「獣骨多量出土竪穴住居は廃屋墓」参照

参考 獣骨出土数100以上の竪穴住居

参考 獣骨多量竪穴住居の様子 1

参考 獣骨多量竪穴住居の様子 1

参考 獣骨多量竪穴住居の様子 1

獣骨数が多量に出土する竪穴住居は廃屋墓あるいは廃屋墓の可能性が高い竪穴住居である
ことから、葬送に関連する祭祀で獣肉がふるまわれ、残った骨を竪穴住居の中に残したものと考えます。
獣肉食は祭祀における特別のご馳走であったと考えることができそうです。

獣骨数が多い竪穴住居は南貝層と北貝層付近に集中しているので、南貝層と北貝層という貝層の被覆が獣骨の保存に大きな役割を果たしているものと推察できます。
南貝層と北貝層から外れ、竪穴住居覆土層の中の貝層・混貝土層(地点貝層)だけに覆われた廃屋墓から獣骨出土数が少ないのは、貝成分による被覆が弱く獣骨が融けてしまったことが関わっているからだと推定します。

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特別メモ
J63、J81、J78、J80竪穴住居からはヒト骨が出土します。発掘調査報告書では獣骨出土の項目の中で記述されています。
このヒト骨出土の意義について発掘調査報告書では検討されていません。
現時点ではヒト骨出土はその竪穴住居でヒトの埋葬が行われたにもかかわらず、ヒト骨が保存される環境が劣悪であったため骨のほとんどが消失し、発掘時に埋葬という状況が観察できなかったものと考えます。
一方、出土ヒト骨の形状等の観察記載は発掘調査報告書では完全にゼロです。そのためヒト骨が人肉食の結果である可能性を完全に否定できません。
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2-2 漆喰貝層無竪穴住居から獣骨出土が少ない理由
漆喰貝層無竪穴住居からの獣骨出土は極めて少量ですがその分布をみるとほとんど南貝層と北貝層付近だけです。この様子は漆喰貝層無竪穴住居に獣骨が置かれた後、運よく南貝層と北貝層に覆われて残ったことを表現していると考えます。
土器(関連指標として中テン箱数)や石器など腐らないものの出土自体が漆喰貝層無竪穴住居では少ないので、もともと置かれた獣骨数も少ないと考えられますが、漆喰貝層無竪穴住居の獣骨出土数は竪穴住居が覆土される直前の数より大幅に少なくなっていると推定します。

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※ 画像の差し替え 2018.02.14
竪穴住居別獣骨数の一部に集計ミスが見つかり、この記事の全ての画像を正確な画像と差し替えました。
2018.01.12記事「獣骨多量出土竪穴住居は廃屋墓」の全画像も正確な画像と差し替えました。
両方の記事ともに内容大要に変化はありません。
なお、竪穴住居別獣骨数とは発掘調査報告書の竪穴住居別記述に書かれている獣骨数です。

2018年2月12日月曜日

分析作業メモ2 石器数の分布

大膳野南貝塚後期集落の出土物による竪穴住居検討 22

2018.02.11記事「分析作業メモ 中テン箱数の分布」に引き続き、大膳野南貝塚後期集落石器数の竪穴住居別分布を漆喰貝層有無別に立体グラフで観察します。

1 竪穴住居別石器数の分布

漆喰貝層有竪穴住居の石器数 1

漆喰貝層無竪穴住居の石器数 1

漆喰貝層有、無竪穴住居の石器数 1

漆喰貝層有竪穴住居の石器数 2

漆喰貝層無竪穴住居の石器数 2

漆喰貝層有、無竪穴住居の石器数 2

2 考察
漆喰貝層有竪穴住居と漆喰貝層無竪穴住居の関係という視点でみると読み取れる分布の大要は中テン箱数分布とほぼ同じであるといえます。

一方漆喰貝層有竪穴住居における石器数分布に関して、北貝層に石器数が最大の竪穴住居(J63、堀之内1式期)が存在することが特徴的です。
2018.01.18記事「石器多出竪穴住居の検討」参照
J63では石鏃出土数が5で全期竪穴住居の中で2番目に多く、また剥片類17、黒曜石剥片類28と石器素材が特筆して多くなっています。黒曜石は石鏃の良質な素材となることがこの集落の石鏃素材別構成からも判っています。(石鏃の石質構成:黒曜石36%、チャート36%、安山岩16%)
従って、J63竪穴住居の故人あるいは家族は狩猟活動に熱心であったことが想定できます。
北貝層の北側には1号鹿頭骨列が存在していて、そのモニュメントを出発点として狩場へ向かっていったと想定できることなどから、北貝層付近居住家族は漁民であるとともに狩猟活動にも熱心であり、その熱心さは南貝層付近の家族を凌駕していたような印象を受けます。

2018年2月11日日曜日

分析作業メモ 中テン箱数の分布

大膳野南貝塚後期集落の出土物による竪穴住居検討 21

2018.02.10記事「貝塚円環形状と竪穴住居分布の関係」で漆喰貝層有竪穴住居と̪漆喰貝層無竪穴住居でその分布特性が全くことなることを再確認したのですが、その2つの集団(?)の間の関係のイメージが湧いてきません。そこでこれまで検討してきた情報をGISで再度空間分析して何か手がかりがみつかるか作業してみます。
この作業から新しい情報を得て充実感を得られるかどうか全く保障はありません。しかし、特段に急ぐ旅ではないので、とにかく予定調和的展望無しで分析作業を行い、同時にこれまでの検討を整理していきます。

1 竪穴住居別中テン箱数の分布
漆喰貝層有無別に大膳野南貝塚後期集落全期を一括して中テン箱数の分布を立体グラフにしてみました。

漆喰貝層有竪穴住居の中テン箱数 1

漆喰貝層無竪穴住居の中テン箱数 1

漆喰貝層有、無竪穴住居の中テン箱数 1

漆喰貝層有竪穴住居の中テン箱数 2

漆喰貝層無竪穴住居の中テン箱数 2

漆喰貝層有、無竪穴住居の中テン箱数 2

2 考察
考察の前提
中テン箱数は竪穴住居からの出土物総量に比例する指標であり、より具体的には嵩の多い出土土器量に近似する指標として使うことができると考えます。
中テン箱数が多いとは、その竪穴住居が廃絶したとき廃絶祭祀が盛んに行われ、土器をはじめとする遺物が多数竪穴住居に持ち込まれたと考えます。
従って中テン箱数が多い竪穴住居は、その住居に居住していた故人や家族が集落の中で軽んじられることのない社会関係を持っていたと考えます。
逆に中テン箱数が少ない竪穴住居は、その住居に居住していた故人や家族が集落の中で軽んじられる社会関係の中にいたり、あるいは集落終末期に廃絶祭祀をだれからもしてもらえなかった場合であると考えます。

考察
1 南貝層に覆われた漆喰貝層有竪穴住居からの中テン箱数が多くなっています。その傾向は北貝層でも見られますが顕著ではなくなります。西貝層では中テン箱数がとても少なくなっています。
この事実から次の推察をします。
・大膳野南貝塚集落のリーダー家族は南貝層に居住していたこと。
・リーダー家族の廃絶竪穴住居を埋めるように貝層が形成されたこと。
・同時にリーダー家族の廃絶竪穴住居が存在しなくても、円環状貝塚形成の意思が働き北貝層の北部や西貝層が形成されたこと。
・従って北貝層の北側や西貝層の形成には南貝層居住家族が関わった可能性があること。

2 南貝層と北貝層の間に漆喰貝層有竪穴住居が存在するにも関わらず貝層が連続しません。その理由は南貝層と北貝層の間に漆喰貝層無竪穴住居群が存在することによると考えられます。漆喰貝層無竪穴住居で中テン箱数が多い竪穴住居は集落が採貝を行わなくなった終末期のものです。
この事実から次の推察をします。
・漆喰貝層有竪穴住居(漁民)は円環状貝塚形成を指向していたと考えますが、漆喰貝層無竪穴住居の存在を避けています。
・従って漆喰貝層有竪穴住居と漆喰貝層無竪穴住居の経済の差(貧富の差)は大きいものがあると想定してきていますが、それにも関わらず漆喰貝層有竪穴住居は漆喰貝層無竪穴住居に配慮をみせています。
・その配慮の存在から漆喰貝層無竪穴住居の家族が極端な隷属下(奴隷的な立場)にあったと考えることは出来そうにありません。

3 参考

ボロノイ図
漆喰貝層有竪穴住居と漆喰貝層無竪穴住居を色分けしてみました。

ボロノイ図 貝層と地点貝層記入
ボロノイ図そのものは考古事象と全く無関係ですが、このような地図を作ってみると漆喰貝層有竪穴住居と漆喰貝層無竪穴住居の立地が全く別の意思で行われたようだと推察できます。
また、漆喰貝層有竪穴住居が無理をして円環状を形成しているような印象も受けます。

2018年2月10日土曜日

貝塚円環形状と竪穴住居分布の関係

大膳野南貝塚後期集落の出土物による竪穴住居検討 20

竪穴住居を漆喰貝層有竪穴住居と漆喰貝層無竪穴住居に区分して出土物等を考察するとその違いが際立ち、集落の様々な特性把握に役立ってきました。
しかし、漆喰貝層有竪穴住居と漆喰貝層無竪穴住居の違いが判りそうで判っていないので、その疑問解消に向けた検討をします。
この記事で疑問が解けたわけではないのですが、検討の糸口は見つけたのかもしれません。

1 貝層と竪穴住居の分布

検討図 1
竪穴住居を漆喰貝層有竪穴住居と漆喰貝層無竪穴住居に区分して貝層分布と一緒に示した地図です。なんとなく円環状の構造になっていますが全体として明瞭な円環と言われると首肯できません。

2 貝層の分布

検討図 2
貝層と地点貝層だけを抜き出しました。図面上部の大きな地点貝層を除くと円環といってもいいような形状を観察できます。

3 漆喰貝層有竪穴住居の分布

検討図 3
漆喰貝層有竪穴住居だけを抜き出すとその分布は思った以上に円環形状らしくなります。

検討図 4
検討図2と3をオーバーレイするとより円環形状が明瞭に浮かびあがります。図面上部の大きな地点貝層と竪穴住居は円環形状を乱す要素として、特別の意味があるのかもしれません。

4 漆喰貝層無竪穴住居の分布

検討図 5
漆喰貝層無竪穴住居の分布は貝層や漆喰貝層有竪穴住居にみられたような円環形状は見られません。漆喰貝層無竪穴住居の分布構造は漆喰貝層有竪穴住居の分布構造と明らかに異なります。

検討図 6
検討図2と5をオーバーレイするとその分布構造の違い(合わない有様)が明瞭になります。

5 検討
漆喰貝層有竪穴住居とは漁撈活動に従事する家族の住居であることは確実です。漁民です。その漁民が円環状の貝塚形成と円環状に竪穴住居も建てたと理解できます。
この集落空間構造をつくる漁民の活動と漆喰貝層無竪穴住居(の家族)がどのようにかかわっているのか、疑問が解けないのが現状です。
漆喰貝層無竪穴住居は出土物が極めて貧相です。文字どおり漆喰貝層が全く出土しません。漆喰貝層無竪穴住居家族は漁民としての意識が無かったことは確実です。漆喰貝層有竪穴住居家族と生業と意識が異なると考えられます。
しかし住居数は漆喰貝層有竪穴住居と漆喰貝層無竪穴住居とであまりかわりません。
疑問解消に向けて検討を続けます。