2011年5月23日月曜日

長沼池と縄文遺跡

宇那谷川流域紀行6 長沼池と縄文遺跡

長沼池の復元図(基図は旧版1万分の1地形図、大正6年測図)

長沼池の復元図(基図は現代2.5万分の1地形図)

 前の記事で書いたとおり、「六方野開墾絵図」から新田開発される前の長沼池を復元してみました。面積は約26ヘクタールあります。台地上に刻まれた浅く広い形状の谷津が、地盤変動により流れの出口がなくなり、谷津の形状そのままの沼(池)が生まれたものであると見立てました。
 この池のほとりに縄文遺跡があります。
 千葉県埋蔵文化財分布地図(3)(平成11年3月、千葉県教育委員会)から、次の情報を読み取ることができます。

遺跡名:屋敷遺跡
所在地:千葉市稲毛区長沼屋敷町
水系:花見川
種別:包蔵地
時代:縄文(中・後)
遺構・遺物等:縄文土器(加曾利E、加曾利B)
立地現状:台地上・畑、宅地
県台帳:150
文献:(空欄)
備考:(空欄)

 最近縄文時代に興味を持ち、別のブログ「ジオパークを学ぶ」で学習の記録をアップしています。(「小林達雄著『縄文の思考』を読んで」、「小林達雄著『縄文人の世界』紹介など)
地域づくりについて考えようとすると、縄文時代について理解しておくことが大切であると、多面的視点から強く感じています。
 こうした私の心理状況の中で、長沼池のほとりに縄文遺跡を見つけて、長沼池と縄文遺跡の関係について興味を深めています。

 次に私が興味を持った点について箇条書きにしてみます。今後本格的に情報を集めて、縄文人の生活をイキイキとしたイメージの中で知り、現在社会に必要な情報を自分なりに引き出したいと思います。

1 長沼池が縄文人の定住環境の場であったということ
 千葉市の歴史に関する書物で長沼池が登場するのは、宝暦期から天保期にかけての六方野開発における長沼新田と宇那谷村の争論が最初のようです。それ以前の長沼池の記述はないようです。
 しかし、縄文遺跡の存在は、縄文時代から長沼池が人々の生活の基盤として活用されたことを証明するものと考えます。この屋敷遺跡の情報について、報告書等はないようですが、出来るだけ情報を集めたいと思っています。
 また、縄文時代の長沼池の自然がどのようなものであったか、近隣遺跡等の情報から類推したいと思っています。

2 縄文遺跡が長沼池の最上流部に位置すること
 縄文遺跡が長沼池の最上流端近くに位置していることから次のような意味を読み取ることが出来るのではないかと思います。
・長沼池に水が流れ込む最初の場所、おそらく湧水近傍箇所を意識して、縄文人は定住地を定めたものと考えます。飲料水の確保が定住地選定の重要ポイントだと重います。飲料水とする清潔な水は長沼池の水面からは採っていないと想像します。
・長沼池の上流を定住地とすることで生活排水、屎尿などが池に入り、池の水を富栄養化させ、魚類などの生物生産量を増加させるということを、縄文人は体験的に知っていたと私は想像します。もちろん現代のような科学的知識ではないのですが、生活体験の知恵があったと想像します。
・近傍の母定住地から近いこともこの場所定住の要件だったと思います。母定住地として、西北西側750mの屋敷西遺跡・歯貫遺跡・新山遺跡が、あるいは南東側1100mの愛生遺跡・愛生東遺跡、北西側1300m子和清水遺跡が考えられます。母定住地はいずれも海に通じる谷津で生活条件は長沼池ほとりより良かったと想像します。人口増などの要因により海と離れた劣悪な長沼池のほとりに、飲料水は確保でき、小魚程度は採れるので、少人数の縄文人が母定住地との関係を維持しながら住んだと想像します。

3 神社「三社大神」が縄文遺跡そばにあること
 縄文遺跡と神社との関係はもちろん分りません。しかし、縄文人以来、人々の生活がこの長沼池のほとりに続き、縄文人が土地の精霊に抱いた感情が、長い年月を経ても連綿と引き継がれたものと想像します。精霊は神に昇華され、縄文人の感情が神社という形態で現代まで残っているものと想像したくなります。(ブログ「ジオパークを学ぶ」で大護八郎著「石神信仰」の読書感想として「カミと『もの』」を書きました)
 なお、三社大神の社格、名称は明治3年神社取調書上で「延喜式外」、「八幡大神、天照大神、春日大神」となっています。(「千葉市史 史料編9 近世」による)
 三社大神の由来はWEB千葉県神社庁によれば次のような説明となっています。
 「創立勧請の年代は明らかでないが、往古より土神一社を産土神として崇敬した。一方郷中では男子が15歳になると、必ず伊勢神宮に参詣し、帰路相州鎌倉八幡宮に詣でて、始めて男子の仲間入りをする習慣があったが、中古の国乱によって参詣がままならず、伊勢・相模の両宮を勧請し土神と併せ祀って三社神社と称した。」

三社大神の鳥居

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