2011年9月10日土曜日

高崎哲郎著「印旛沼掘割物語」紹介


高崎哲郎著「印旛沼掘割物語」(崙書房出版、2011年5月)

「水とともに」(独立行政法人水資源機構)に連載され(2010年6月号~2011年3月号)、水資源機構WEBページの広報誌バックナンバーコーナーで閲覧できる「泥と汗と涙と<物語>江戸・天保期の印旛沼掘割普請始末」が単行本として崙書房出版から出版されましたので、紹介します。
印旛沼堀割普請の歴史(経緯)についてとてもわかりやすい本です。

1 諸元
著者:高崎哲郎
書名:印旛沼掘割物語 江戸・天保期の印旛沼掘割普請始末
発行:崙書房出版
発行年:2011年5月25日
体裁:新書版(17.6×10.6×1.6㎝)
ISBN978-4-8455-0198-4

2 目次
第一章 暗雲、乱れ飛ぶ-五大名に御手伝普請の幕命が下る
第二章 非情の陥穽-五大名・対応を急ぐ 天道、是か非か
第三章 宿命の谷間へ-普請丁場、決まる 残酷な夏①
第四章 忍従の日々-各藩の江戸藩邸、準備に追われる 残酷な夏②
第五章 没義道ならずや-難工事、開始さる 残酷な夏③
第六章 闇夜を裂く稲妻-人夫、続々と現場に入る 残酷な夏④
第七章 大地の叫び-炎暑・落雷・疫病 残酷な夏⑤
第八章 響きと怒り-「大蛇に食いつくされる」 残酷な夏⑥
第九章 孤月、冴える-風水被害、変転する幕府計画、無駄死の人夫たち 終末へ①
第一〇章 崩壊の秋-印旛沼 堀田かいなし 水野あわ 終末へ②
あとがき ~<残酷な夏>印旛沼掘割普請放棄の巨額なツケ~

3 感想
天保期に印旛沼堀割普請の様子を理解する上で最もわかりやすい、ポピュラーな本だと思います。
「天保期の印旛沼堀割普請」(千葉市発行、原典史料とその解説本)をベースに、読者の興味をそそるようなストーリーで書かれています。写真や図版も豊富です。
著者の考えや現地視察の様子も反映されています。
印旛沼堀割普請の歴史を知りたい方にはおすすめの本です。
なお、「天保期の印旛沼堀割普請」(千葉市発行)をベースにして、同じくストーリー性を有する著作として鏑木行廣著「天保改革と印旛沼普請」(同成社、2001年)があります。こちらの方は原典史料を忠実にストーリー化しているという印象の本です。

4 参考 用字法
紹介した本の書名「印旛沼掘割物語」では「掘」の字を使っています。原典史料「天保期の印旛沼堀割普請」では「堀」を使っています。
このブログでは当初パソコンの漢字変換機能のままに「掘」の字を使い、字を意識してからは「堀」の字にしています。過去記事修正の手間を省いてサボっているため、用字法が混乱しています。時間を見つけて「堀」の字に統一したいと思っています。
「堀」の字に統一する理由は、天保期の普請では「古堀」(享保、天明期の工事跡)が存在していて、つまり既に形を成していた「堀」が存在していて、その普請ということですから「堀」の字を使う用字法が適確であると思うからです。
「掘」の字を使うと、掘るという活動イメージが強くなり、天保期の人々が「ホリワリ」に抱いていたイメージと乖離してしまうと思います。

0 件のコメント:

コメントを投稿