2013年3月29日金曜日

立川断層トレンチ公開のお粗末


このブログ28日記事「立川断層トレンチの見学」で報告した立川断層トレンチの説明が100%誤認であり、東大地震研究所の佐藤比呂志教授が謝罪した記者会見がマスコミを賑わしています。

トレンチ公開時の現場の説明は次のようになっています。

トレンチ公開現場の説明パネル
立川礫層を切って断層があり、断層面に白い断層粘土があるという説明です。

白い「断層粘土層」

記者会見における謝罪説明では、現場見学者から指摘されて調べたところ、白い断層粘土と思ったものは工場の基礎工事で打ち込まれたコンクリート製の杭だったとこのとです。

上記公開現場の説明パネルをよく読むと、「壊れやすい粘土塊が大きいまま、しかもその長軸をたてたまま他の礫とともに堆積するのは現実には難しいと思え、そのようなものが複数あって礫層中に縦帯状に並んで存在することは、不思議で、…」などの記述があります。今から思えば、冷静に思考すれば自然現象として見ると「不思議」であり、人工現象として考えれば「ありふれた地物」だったということです。

東大地震研究所のホームページには328日付け資料「平成24年度立川断層帯トレンチ調査「榎(えのき)トレンチ」の調査結果について(暫定版)」が掲載され、間違った言い訳情報(断層の位置に偶然工場境界があった)が説明なしで収録されているとともに、次の修正すべき判断が掲載されています。

「平成24年度立川断層帯トレンチ調査「榎(えのき)トレンチ」の調査結果について(暫定版)」のあるページ

印象的には現場経験の少ない大学院生クラスの真の調査者が起こしたよくある初歩的チョンボで、たまたま2万人もの見学者が発生したので謝罪に追い込まれたということとして感じました。佐藤教授の監督責任は免れませんが、もし佐藤教授自身が真の調査者だったら、原発敷地の断層調査の委員などを務めることなど許されるものではありません。仮に学術的にもっと高度の場面で間違ったら、謝罪などは必要ないでしょう。納税者も怒らないでしょう。

さて、立川断層トレンチを見学したのは、立川断層そのものに興味があるというより、次のような期待感からです。つまり、花見川流域にある断層地形に対する私の興味を興味次元で終わらせないで、その解明に進むための糸口となる情報が得られるのではないかという期待感です。
そうした点から立川断層トレンチ見学と後日談としてのお粗末は、当方の知的好奇心を強く刺激していて、少しずつ情報が集まってきています。

現在次のような問題意識をもっていますので、時々ブログ記事として情報発信する予定です。

●立川断層帯の調査は地震防災上の要請から国策として大規模に行われている。一方、花見川流域にある断層地形は全く見向きもされていない。断層地形の存在が知られていないのか、既知であるが検討意義がほとんど存在しないものとして結論付けられているのか?

●千葉県の調査で東京湾北部断層は活断層ではないと結論付けられた。その東京湾北部断層と花見川流域にある断層地形は並行に走っているように観察される。花見川流域の断層地形が東京湾北部断層の一部である可能性があるのではないか。そうすると、千葉県の調査はその調査範囲が不十分である可能性があるのではないか。

●花見川流域の断層地形の北西延長が元荒川断層帯につながるような位置関係にある。

●断層付近に生じる浸食地形について、花見川流域では自然地形が残っている部分が多いことから、断層運動と谷津地形発達の相関について詳細調査をする意義が大きい。


花見川流域の小崖地形(天戸町)
この小崖地形は戦前の学術論文でも言及されている。(2012.1.23記事「小崖1

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2 件のコメント:

  1. 海老川乱歩です。

    ●「トレンチ公開現場の説明パネル」を読むと非常に分かりに難い文章ですね。
     一番言いたい事が一番最後に書かれています。
     北西から南東方向に走る断層に対して、トレンチが南西から北東の方向に1本しか
     掘らないというのも不十分としか言えません。
     この調査になんと2千万円もの大金がかかったという記事をどこかで見て驚いています。
     調査内容の明細書を見たいですね。何に一番カネがかかっているのか。

    ●白い「断層粘土層」の写真ですが、コンクリート杭と言われている物体ですが、
     鉄筋が1本も見えないのが気になります。
     杭からこぶ状に溢れ出たものなのでしょうか。
     WEBを調べるとこの現場周辺の段差を確認できる写真がヒットします。

    ●元荒川断層帯について
     海老川乱歩の素人研究家の意見として関東平野の断層の特徴は、
     概ね北西から南東方向に走っていると睨んでいます。
     立川断層、元荒川断層、小崖1、2、3も、方向的にはほぼ一致します。
     また、大河の利根川や多摩川も方向的にはほぼ一致しますので断層起因と睨んでいます。

    ●東京湾北縁断層
     習志野市のHPを見ると、「国道14号に沿って存在が推定されております」とあります。
     国道14号は、旧海岸線付近なので評価が難しいですね。
     提唱者の説明を聞いてみたいものです。
     あると言われたり無いと言われたり都市伝説状態になっていると感じています。

    ●花見川流域の小崖地形(天戸町)の写真について
     この写真を見ても恐らくどこに段差があるのか殆どの人が分からないと思います。
     1.最初に Google か 国土地理院の空中写真をのせ写真の位置が分かるようにする
     2.段差の境界付近の道路から畑を見下ろす写真か、その逆の畑から道路を見上げる写真をのせる
     3.道路と畑の境界付近の段差がある拡大写真をのせる
     と段差の位置と段差が分り易いと思います。

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  2. 海老川乱歩さん
    コメントありがとうございます。

    ●基礎杭のコンクリート円柱が無筋だったので、このようなとんでもない事件が発生したのだと思います。
    ●地中の長い円柱コンクリートを断層粘土と間違ったということは、露頭をスコップなりで「掘る」ということをほとんどしていなかったことを物語っています。建機で掘った斜面を文字通りなぜただけで調査をしたということです。
    ●断層粘土が断層面でどのように形成されたかなどの基本的観察力が無かったということです。
    ●私は、立川礫層に断層は無かったという今回の判定は、信用できないと思います。露頭調査能力の欠如した人が調査したのですから。
    ●建設会社に支払ったのは2000万円ですが、調査費用は億単位だとおもいます。その億単位の税金が無駄になったような気がします。本来知ることが出来たはずの真実を見逃したような気がします。国民は高い授業料を東大に支払っています。
    ●花見川の断層地形と元荒川断層帯との関係、東京湾北部断層との関係などについて、専門家が持っている知識(その正誤は別にして)を知りたいのですが、アプローチできていません。
    ●天戸町の小崖地形の写真についてのご指摘ありがとうございます。確かにわかりずらいです。当方は現場を見ているので、この写真が小崖の実際の姿を表していると思ったのですが、ご指摘により、相当「主観的」になっている自分に気がつきました。

    ●海老川乱歩さんのこのコメントを含めて記事にしたいと思います。その中で、小崖地形のわかりやすい説明を試みます。

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