2013年9月6日金曜日

千葉土木事務所から再び回答を得る3(「人工河川」定義の意図と陳腐化)

3 「人工河川」定義の意図と陳腐化
3-1 私の心配
2013.0524記事「千葉土木事務所に質問して回答を得る2(河川整備計画の記述の疑問)」で記述したように、花見川を印旛放水路(下流部)と呼び、それを「人工河川」と定義してしまっては、人々が花見川を河川として認識することを妨げてしまうと心配しています。

3-2 回答
この心配に対して次のような回答をいただきました。
20135月の回答
次の3つの理由から印旛放水路は「人工河川」である。
1印旛放水路ではポンプアップして水を流す構造になっている。常時水が流れうる構造ではない。
2江戸時代以降工事が行われてきた水路である。
3昭和の工事で現在の水路を造った。

20138月の回答
人工河川とは次の河川である。
・流域を跨ぐ河川
・新たに掘削した河川

何れの回答も、申し訳ありませんが、その場のアドリブであって、千葉県河川行政が本来所持している検討結果ではないと思います。

担当の方も、「人工河川か、自然河川か」という問題意識とか、技術的基準とか、それによる各河川の分類とかは千葉県では一切ないと話されています。

20135月の回答は、印旛放水路の特徴を述べただけで、「人工河川」の定義ではありません。

20138月の回答も矛盾だらけです。
「・流域を跨ぐ河川」が人工河川なら、印旛沼水系の河川は、洪水時の水を東京湾に流域を跨いて流すので、全て人工河川になっていいはずですが、そんな気配は微塵もありません。それどころか、流域を跨ぐ河川の本家本元である印旛放水路(上流部)ですら、河川整備計画に人工河川などという言葉は一言もありません。

「・新たに掘削した河川」が何もない台地面を掘削したという意味なら、そもそも印旛放水路(下流部)はそれに該当しません。(現在の花見川の水路はもともとあった花見川の谷津と印旛沼水系の谷津を利用したものです。その二つの谷津は地形上連続する1つ谷津であるという特殊な谷津だったのです。)機械で谷津の掘削土工事をしたという河川の意味なら、千葉県下全河川が人工河川になります。

3-3 人工河川定義の政策意図
千葉県河川行政にあるのは「印旛放水路(下流部)は人工河川」という唯一無二の定義だけです。

千葉県河川行政では「印旛放水路(下流部)は人工河川」という定義以外に、人工河川とか自然河川とかいう用語は一切使われていないのです。

そもそも、「自然河川か、人工河川か」ということを技術的に考えるならば、日本の河川は全て人工河川であるということになると思います。

業務多忙の千葉県河川行政にあって、何が人工河川であるか、技術的に検討し定義するなどの無意味で悠長な活動をおこなえるだけの暇と余裕があるとも思われません。

「印旛放水路(下流部)は人工河川」という定義は技術的なものではなく、印旛放水路(下流部)を他の河川から区別し、河川に対する行政関与度を特別レベルで確保したいという政策的なものであると思います。

「何しろこの河川は人工河川なんです。」といえば、大工事を行う際に、難しい問題も少なくなるという見立てです。その際、自然保護等に係る訴訟があったとしても、行政側に有利です。

「印旛放水路(下流部)は人工河川」という、政策定義をした背景には、「利根川水系河川整備基本方針」にある「利根川放水路」構想があると思います。花見川を1000m3/sの利根川洪水を流す放水路に作り直すという構想です。

しかし、「利根川放水路」構想は国により「利根川水系利根川・江戸川河川整備計画【直轄管理区間】」(2013.05.15)で見送られることになりました。

3-4 人工河川定義の陳腐化と残存させることによる悪弊
花見川を利根川洪水を流す巨大放水路にするという構想が遠ざかった現在、「印旛放水路(下流部)は人工河川」という河川整備計画中の定義が、その本来の役割を失ってしまいました。宙ぶらりんになったということです。

「利根川放水路」構想に備えて河川整備計画に埋め込んでおいた「印旛放水路(下流部)は人工河川」という定義が、一転して、千葉県の政策として不必要なものとなったのです。

「印旛放水路(下流部)は人工河川」という定義が社会情勢の中で陳腐化してしまいました。

さらに、政策的に不必要な定義を残しておくと、陳腐なだけでなく、いろいろな悪弊が地域を蝕むという新たな問題発生がクローズアップされる状況となりました。

「人工河川なんだから、丁寧な河川行政は必要ない。特に自然環境に対する配慮などは元来は必要がなかったと考えて間違いない。」と職員の方は知らず知らずのうちに意識して、花見川を軽視します。
「人工河川なんだから、興味も関心も持つ必要はない。どうせつまらない河川だろう。」と地域住民は思ってしまい、花見川から遠ざかります。
「人工河川なんだから、河川敷に小屋を建てても、ゴミを捨ててもかまわない。現にお咎めなしで、そうなっている。」と利用者は花見川を大切にしません。

要するに「人工河川」という言葉があるために、人々が花見川をぞんざいに扱い、花見川の現実を少しずつ悪い方向に持って行ってしまいます。

今となっては、「人工河川」という言葉は河川行政にも、住民にも悪い結果だけしかもたらさない、不幸招来の言葉になっているのです。

3-5 人工河川定義の削除要望と川づくり進展希望
「利根川放水路」構想が50年後あるいは100年後に課題として浮上する時があれば、その時の世代が花見川の扱いを決めれば、それでよいのです。

これまでの千葉県行政が必要と考えた「印旛放水路(下流部)は人工河川」という定義の必要性が失せ、その悪弊だけが心配される状況になってしまいました。

千葉県が、「印旛放水路(下流部)は人工河川」という定義をすみやかに河川整備計画から削除し、花見川を他の千葉県河川と同じ扱いに戻すことを要望します。

そして、「印旛放水路(下流部)」という名称を花見川という名称に変更し、県民と県河川行政が一緒になって川づくりの輪を広げてゆくことを希望します。

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【参考】

花見川の区間別自然地理的出自

河川整備計画で花見川を人工河川とした理由である「台地の開削」は、印旛沼開発事業及び印旛沼堀割普請で行われていません。行われたのは、もともと台地を刻んでいる谷津の底部掘り下げです。
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このシリーズおわり


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