2014年4月18日金曜日

花見川河川争奪の証拠 (上)

シリーズ 花見川地峡成立の自然史 -仮説的検討-
第2部 花見川河川争奪に遡る その3

花見川に河川争奪が存在しているという証拠を提示します。

ア 河川争奪の定義
二つの図書の河川争奪の定義と一般的なイメージ図を示します。

● 新版地学事典(平凡社)の河川争奪説明
「piracy、capture 河川が流域を越えて隣の河川の水流を奪う現象。流域境界の位置は、河川の浸食力の違いを反映し、一方の河川の浸食が激しく、河床高度が低い場合には、他方の河川流域に食い込み、ついにはその水流を奪う。水流を争奪した河川では、流量の増加で下刻が進む。争奪された河川では、争奪地点から上流流域がなくなり、谷の大きさに対して流量が少ない川となる。そのような河川を無能河川、谷が切断された争奪地点をウィンドギャップ(風隙)という。」

● 鈴木隆介著「建設技術者のための地形図読図入門 第3巻段丘・丘陵・山地」(古今書院)の河川争奪説明
「河川争奪は、分水界を共有する2本の河川の一方または両方の頭方侵食または側刻によって分水界が低下し、ついには両河川が接触したために、河床高度が高い方の河川が低い方の河川に流入して、前者の流域変更が起こる現象である。」

鈴木隆介著「建設技術者のための地形図読図入門 第3巻段丘・丘陵・山地」(古今書院)の河川争奪説明図

●一般的な河川争奪説明図

河川争奪の古典的説明図
「geomorphology」(c.a.cotton 1958)より

イ 花見川に河川争奪が存在していることを証明する要件(証拠)
アの2つの図書における河川争奪の定義から、花見川に河川争奪が存在していることを証明する要件(証拠)を次のように整理することができます。

第1要件 印旛沼水系河川の流域が東京湾水系河川の流域に変更となったことを示す証拠
第2要件 印旛沼水系河川より東京湾水系河川の方が侵食力が強い(河床高度が低い)ことを示す証拠
第3要件 印旛沼水系河川に存在する無能河川、ウィンドギャップ(風隙)の証拠

これらの3つの要件についての証拠を提示できれば、花見川河川争奪現象の存在を証明することができます。

順次証拠を示します。

ウ 第1要件 印旛沼水系河川の流域が東京湾水系河川の流域に変更となったことを示す証拠
第1要件については、次の3つの証拠を示します。
●花見川流域の水系パターン異常
●印旛沼水系河川特有の浅い谷が花見川流域に存在する
●花見川流域に印旛沼流域の連続する河岸段丘が存在する

この記事では第1要件の最初の2つの証拠について説明します。

ウ-1 花見川流域の水系パターン異常
次の図に示すように、花見川流域は北側に印旛沼流域に食い込むように分布していて、その部分の水系パターンは本川筋と支川筋が全く真逆の方向を向いています。極めて異常なパターンをしています。

花見川流域の水系パターン異常
この水系パターン異常が、印旛沼水系河川の流域が東京湾水系河川の流域に変更になった3つの証拠の第1です。

ウ-2 印旛沼水系特有の浅い谷が花見川流域に存在する
印旛沼水系谷津の最上流部付近は台地上の浅い谷になります。ところが東京湾水系谷津は台地を削る深い谷になっています。
次の図に示すように、花見川流域の水系パターン異常になっている部分の谷津最上流部付近はいずれも浅い谷になっています。

花見川流域に存在する「印旛沼水系特有の浅い谷」(基図は旧版1万分の1地形図)

参考 花見川流域に存在する「印旛沼水系特有の浅い谷」(現代標準地図による位置表示)

この東京湾水系の流域に浅い谷が存在することが、印旛沼水系河川の流域が東京湾水系河川の流域に変更になった3つの証拠の第2です。

つづく

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