2014年10月7日火曜日

遺跡密度検討に関するそもそも論

花見川地峡史-メモ・仮説集>3花見川地峡の利用・開発史> 3.1埋蔵文化財データに基づく地域特性基礎検討>3.1.40遺跡密度検討に関するそもそも論

現在進めている時代別遺跡密度図の比較対照の意義と問題点についてメモしておきます。

1 縄文時代と弥生時代の遺跡密度図の比較対照の問題点
●問題点 時代細区分毎に生じている詳細事象に対応できない
そもそも縄文時代遺跡密度図と弥生時代遺跡密度図を直接比較対照することには問題があります。
縄文時代も、弥生時代もさらに細区分されていて、その細区分の間で大ドラマが展開しています。
特に縄文時代では社会の仕組みの根本的変化や出自の違う人の入れ替わりがあったようです。
そして縄文時代と弥生時代の時間が20:1くらいと大きく異なります。
ですから、縄文時代と弥生時代という2つの言葉があるからといって、それをいいことにして、あたかも同じ次元の2つの事象を比較するように縄文時代全部の遺跡密度と弥生時代全部の遺跡密度を1:1で比較することには大いに問題があります。

可能ならば、縄文時代も弥生時代も細区分された時代毎に遺跡密度図を作成して比較する必要がありますが、現状ではそのようなデータがないので当面は現状で我慢するしかありません。

2 縄文時代と弥生時代の遺跡密度図の比較対照の意義
●意義 その1 遺跡密度図自体の価値検討
このような問題点があることは判っているのですが、時代区分がどうのこうの前に、遺跡密度図自体が千葉ではつくられたことがないようです。
縄文時代とか弥生時代とか大雑把な区分でありますが、千葉で初めてつくられた遺跡密度図ですから、まずそれを検討してみてどのように役立つか考えることは大いに意義があると思います。

●意義 その2 大局観、大勢観を得る
縄文時代=狩猟採集社会、弥生時代=農耕社会の幕開けと考えれば、二つの時代をそれぞれ丸めてしまい、1:1で比較考察することも有り得ると思います。
考古歴史の考察にも事象を大局的、大勢的に比較対照する場面が必要であるに違いありません。どこまでも事象を細分化して分析的に思考していくことだけが方法ではないと思います。
そういう大局観、大勢観を得るため、縄文時代、弥生時代という区分で遺跡密度図を考察することに意義があると考えます。
これは考古や歴史の初心者にとって大切な意義です。

●意義 その3 興味の核となる仮説を得る
縄文時代と弥生時代の遺跡密度図を比較対照すると、地図上で様々な分布上の特徴がみつかり、主体(私)の知識レベルの範囲以内で、社会変化に関する様々な解釈やストーリー、仮説が生れます。
この解釈・ストーリー・仮説等を遺跡情報に投影して、遺跡情報の意味をつない行けば、これまで気がつかれることがなかった新しい事実や斬新で有用な解釈を得ることができるかもしれません。つまり主体(私)なりに独自の調査方向を定めることができます。またそうした活動の中で主体(私)の遺跡に対する興味や学習意欲を掻き立てることができます。

●意義 その4 説明資料として使う
恐らく、考古歴史の専門家にとって、遺跡密度図とその時代比較資料は考古歴史事象の説明資料として有用であると考えます。

3 問題点と意義検討から判ったこと
上記問題点と意義検討から判ったことを自分なりに一言で要約すると次のようになります。

時代別遺跡密度図比較から考古歴史事象に関する新事実を直接得ることはできないが、考古歴史事象を理解するための多様で有益なヒントを汲み出すことができる。

4 縄文時代の細時代区分別ヒートマップ作成チャレンジ
従って、このファイルを使ってアドレスマッチングによる擬似プロット図を作成し、それから遺跡ヒートマップ図を作成できます。

ふさの国ナビゲーションからダウンロードした縄文時代遺跡エクセルファイルをみると、時代細区分情報が掲載されているものが多いので、この情報でファイルを分割すれば、原理的に細時代区分別ヒートマップを作成することができます。(アドレスマッチングによる擬似プロット図による遺跡ヒートマップ図作成)

相当のパワー投入は必要ですが、射程距離にあるという感覚の作業量ですから、近々チャレンジしてみようと思います。

縄文時代の時代細区分別ヒートマップが出来た時、上記問題点がどの程度解消できるのか、検討していみます。

5 参考 これまでに作成したヒートマップと元となる擬似プロット図および遺跡数データ

これまでに作成した時代別遺跡密度図(半径パラメータ=5km)と元となる擬似プロット図

遺跡数データ
奈良時代遺跡数補正は2014.08.27記事「奈良時代遺跡密度データを補正する」参照

時代の年数から、旧石器時代と縄文時代を比較することには抵抗はすくないが、縄文時代と弥生時代を直接比較することは注意が必要であることがわかる。


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