2015年4月12日日曜日

八千代市小字地名データベース完成

小字地名データベース作成活用プロジェクト 5

1 八千代市小字地名データベースの作成
千葉県地名大辞典(角川書店)附録小字一覧のうち八千代市分の大字・小字の文字表記とルビを電子化してExcelに流し込みデータベースを作成しました。

これで、千葉市と八千代市分の小字データベースが完成しました。

小字地名データベース作成市町村(2015.04.12)

2 八千代市小字地名データベースの諸元と試用
2-1 八千代市小字地名の諸元
・大字数 28
・小字数 565

2-2 試用その1 地名の層序年表との対応
「地名の語源」(鏡味完二・鏡味明克、昭和52年、角川書店)掲載の「地名の層序年表」(※)との対応を調べると、21の語根型のうち、次の3つの語根型が出現しました。
※ 2015.04.10記事「千葉市小字地名の層序学」参照
……………………………………………………………………
八千代市小字地名データベースから抽出した語根型別地名

●~屋敷
大和田 古屋敷

●~宿
大和田 上宿
米本 内宿北、内宿南、上宿西、上宿東、下宿東

●~新田
大和田新田
高津新田
佐山 新田
麦丸 新田、新田台西、新田台、新田台東
……………………………………………………………………
ある一定地域(自治体域等)の小字データベースを地名の層序表と対応させれば、その対応状況から地域の歴史特性が判るかもしれないと考えて、上記作業をしてみました。

八千代市の古墳時代、奈良・平安時代の濃厚な歴史が、この作業ではほとんど表現されていないと思います。

古代の標準化石地名としては「~屋敷」一つが抽出されたのみです。

「地名の語源」(鏡味完二・鏡味明克、昭和52年、角川書店)掲載の「地名の層序年表」はあくまで全日本、全時代、汎用問題意識の下につくられているので、自治体単位の詳細分析には、満足する結果を求めるのは難しいと思います。

しかし、下総地域とか房総を対象にした「地名の層序年表」似の古代を対象とした自前評価検討基準表をつくるまでは、この「地名の層序年表」を機械的に対応させて、それなりの情報を得ていくことにします。

2-3 試用その2 金(カナ・カネ)地名の抽出
データベースの試用として、カナ(カネ)地名について調べてみました。

次の5地名が抽出されました。

大和田新田 津金向(ツガネムカイ)
麦丸 金塚(カネヅカ)、金塚向(カネヅカムカイ)
吉橋 津金(ツガネ)
桑橋 金堀境(カネホリサカイ)

抽出結果と近くの精錬関連遺跡を地図にプロットしてみました。

八千代市小字地名データベースから金(カナ・カネ)地名を抽出した結果
基図は八千代市小字図(「八千代市の歴史 資料編 近代・現代Ⅲ石造文化財」(八千代市発行)附録)
大和田新田芝山遺跡の精錬関連遺跡は10世紀前半頃の時期のようです。(「房総半島における古代精錬遺跡」(神野信)

精錬関連遺跡下流の谷津に「津金」その付近の台地に「津金向」の地名があります。

「津金」とはその上流域に精錬や鍛冶などの施設がある谷津の意味であると推察できました。

分布図から、人名にもよくある「津金」とは金谷津(カナヤツ・カネヤツ)を隠語風に逆にして(ヤツカネ)、それが縮まった言葉であることがわかりました。

千葉市杉葉見遺跡(古墳時代鍛冶遺跡)の下流の谷津に神場(カンバ)(=カナ(金)場=鍛冶場)という小字があるのと同じで、精錬遺跡の場所を下流で知ることができるように谷津に名前がついたのだと思います。

また、精錬活動の影響が谷津の下流まで及んでいたので、呼ばれた地名かもしれません。

桑橋に金堀境という地名があります。
この地名は桑納川南の台地に精錬遺跡があるので、桑納川北の台地からみて、桑納川を境と見立てたのだと思います。
(この南直ぐの船橋市域に地名「金堀(カネホリ)」谷津名「金堀川」がありますから、金堀境の由来は桑納川南岸の地物とは関係のないことがわかりました。船橋市域に古代鍛冶遺構があるのかもしれません。2015.04.15追記)

それだけ精錬関連遺跡が(見つかっている遺跡以上に)台地全体に拡がっていた可能性を感じさせられます。

奈良・平安時代になると、古墳時代には空白であった桑納川南側台地に遺跡が密に分布するようになることと精錬関連活動が対応するのだと思います。

金塚(八千代市小字図では金城)と金塚向は情報をもっていませんが、麦丸付近にその地名の由来となる精錬や鍛冶遺跡があるのかもしれません。調査意欲が掻き立てられます。

データベース検索(試用)により、精錬関連遺跡の影響が広域に及んでいることや、精錬関連遺跡の分布がかなり広いかもしれないというヒントを得ることができました。

八千代市には小字分布図があるのですが、以上の検討を分布図だけを頼りに行うことは、私の気力、集中力では実際上はできません。

小字地名データベースの効用は自分が想像していた以上に大であると感じました。

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