2015年6月14日日曜日

墨書土器代表文字の意味

花見川地峡史-メモ・仮説集->3花見川地峡の利用・開発史> 3.4〔仮説〕律令国家の直線道路、東海道水運支路の検討>3.4.147 墨書土器代表文字の意味

八千代市井戸向遺跡の墨書土器データを整理して、ゾーン毎に検討することにします。

この記事ではその前段として、ゾーン毎の代表的文字を抽出して、代表的文字の意味を検討して遺跡全体のイメージを豊かなものにしたいと思います。

次の表はゾーン毎の代表的文字を抽出したものです。

白幡前遺跡と井戸向遺跡の墨書土器の代表的文字

注1)「夫※」は大一を重ねて書いた文字(大一 たいいつ)です。

次の注記は自分の誤解でしたので、訂正します。(2015.06.21追記) 注2)「廾」(キョウ)は出土文字の画像イメージに似ていますが、間違った漢字あてはめであると考えます。元情報源である「八千代市白幡前遺跡 -萱田地区埋蔵文化財調査報告書Ⅴ- 本文編」(1991、住宅・都市整備公団首都圏都市開発本部・財団法人千葉県文化財センター)では「廿」を用いています。画像と漢字(活字)との対応を取るつもりなら、出土文字の画像イメージとずれますが、「廿」(読みはツヅラ)が正解であると考えます。千葉県墨書土器データベースを作成する際に、間違った類似文字にわざわざ安易に変更してしまったようです。

注2)「廾」(キョウ)は出土文字の画像イメージに似ています。このブログでは、現代利用されている漢字活字に当てはめると、「廿」(読みはツヅラ)が正解であると考えています。

代表的文字はその文字が出てくる史料は全部含めてカウントしました。(例 「生」は「生ヵ」、「□生」、「生生」などを含む)

代表文字を1つに絞ることができるゾーンと1つには絞れないゾーンがあります。

代表文字の分布を地図にすると次のようになります。

ゾーン別墨書土器の代表文字

白幡前遺跡では墨書土器の文字について詳しく検討してきていますので、その検討結果を踏まえて代表文字の意味イメージを簡潔に地図に書きこんでみました。

ゾーン別墨書土器代表文字の意味イメージ(想定)

1 井戸向遺跡と白幡前遺跡の違い
井戸向遺跡は「冨」(経済繁栄)がⅠゾーン、Ⅱゾーンで代表文字になっています。
Ⅰゾーンは組織活動が行われ、業務地区であると考えていますが、軍事基地というよりも経済活動を行っていたようです。
白幡前遺跡の軍事一色と趣が異なります。
この違いをこれから検討して、自分なりに納得できる理由を考えたいと思います。

2 「入」の意味
これまでの検討と異なる点が1つあります。
「入」(井戸向遺跡Ⅲゾーン、白幡前遺跡2Eゾーン)は次のように解釈してきました。
「入(ニュウ)は納入の入の意味で、おさめる、献ずるという意味になります。提、奉と同義です。」(2015.05.11記事「八千代市白幡前遺跡 墨書土器の文字検討 その1」参照)

この記事では「入」を軍隊入隊(官の軍事組織入隊)祈願として捉えてみました。

そのように捉えると、井戸向遺跡Ⅲゾーンを新兵候補の訓練施設、白幡前遺跡2Eゾーンが軍隊従軍文官候補の訓練施設として捉えることができます。

白幡前遺跡2Eゾーンでは「圓」(財務管理の成功の祈願)、「文」(正しい文書を作成する祈願)が出土し、会計係とか書記官の活動が想定されます。

同時に、「遺構は竪穴住居・掘立柱建物とも集中して建てられ、建物の軸方向もよく揃えられている。2群DグループからFグループは同じような規模の建物群が並んでおり、この中では最も整った建物配置を採っている。」(「八千代市白幡前遺跡 -萱田地区埋蔵文化財調査報告書Ⅴ- 本文編」(1991、住宅・都市整備公団首都圏都市開発本部・財団法人千葉県文化財センター))としています。

このような情報から、白幡前遺跡2Eゾーンは軍事基地における事務ゾーンであり、その事務ゾーンで官人の下で下働きや小間使いなどで働く者が軍事組織の事務部門に正式に「入」(ハイル)(官として採用される)ことを祈願したと考えました。

井戸向遺跡Ⅲゾーンでは「入」(ハイル)と「生」(イキル)が一緒に代表文字になっていますから、軍事部門のゾーンで、かつ兵として正式登用されていない人間が多いと考え、そのゾーンが新兵訓練地みたいなところと、仮説してみました。

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