2015年6月16日火曜日

改訂 千葉県墨書土器出土数上位遺跡の把握

花見川地峡史-メモ・仮説集->3花見川地峡の利用・開発史> 3.4〔仮説〕律令国家の直線道路、東海道水運支路の検討>3.4.149 改訂 千葉県墨書土器出土数上位遺跡の把握

2015.05.03記事「千葉県における墨書土器出土件数上位25遺跡の把握」の内容が時代遅れの情報でしたので、大いに遅れましたが、この記事で訂正します。

同上記事では「千葉県の歴史 資料編 古代 別冊 出土文字資料集成」(千葉県発行、1996)のデータに基づいて千葉県内墨書土器出土数上位遺跡のリスト、グラフ、分布図を示しました。

一方、専門家の方から教えていただいた全国墨書土器・刻書土器データベース(明治大学日本古代学研究所webサイトで公開)に慣れて、ある程度自由に使えるようになってみると、上記図書の情報はあまりに古く、現在の情報は膨大な量に変化していることに気が付きました。

そこで、千葉県内の墨書土器出土数上位遺跡の情報をつくり直して、掲載します。

次の表は千葉県墨書土器出土数上位遺跡リストです。

千葉県墨書土器出土数上位遺跡リスト
注)「○○遺跡 △地点」、「○○遺跡 △次調査」等の情報は「○○遺跡」に統合しました。「○○遺跡群 △遺跡」はそのままとしました。

1996年図書で作成したリストでは上位25遺跡を抽出し、結果として25位遺跡の出土数が100でした。
今回は出土数100以上の遺跡を抽出しました。
54遺跡が並び、遺跡数は倍増しました。
千葉県の墨書土器情報量は著しく増大しました。

なお、18位高津新山遺跡の情報だけは、データベースにほとんど掲載されていないため、1996年図書の情報をその位置に差し込みました。
この処理により、非の打ちどころの無い統計情報となりませんが、高津新山遺跡が高津馬牧と関連する遺跡であることと、白幡遺跡・井戸向遺跡等との関連が強い遺跡であり、このブログのテーマである東海道水運支路仮説検討に欠かせない遺跡になっています。そのため、墨書土器229点出土が間違いない情報ですので、データベースには掲載されていませんが、このリストに含めました。自分の検討に必要な情報であることをしっかりと確認しておくためです。

このリストをグラフにすると次のようになります。

千葉県内墨書土器出土数上位遺跡

遺跡別に全国と比較すると、鳴神山遺跡は全国5位、上谷遺跡は7位、白幡前遺跡は10位となります。
ちなみに、全国1位は奈良県の平城宮跡(3319)、2位は宮城県の山王遺跡(3064)、3位は福島県の上吉田遺跡(1914)です。
全国墨書土器出土件数ベスト20遺跡の情報は番外編2015.06.04記事「全国 墨書土器出土件数ベスト20遺跡」に掲載しています。

千葉県情報を分布図にすると次のようになります。

墨書土器出土数上位遺跡分布図

この分布図のプロットは正確なものです。(アドレスマッチングによるものではありません。)

分布図を見ると、遺跡が連担(密集)しているところが多いことに気が付きます。

その遺跡連担の様子を分布図に描きこんでみました。

墨書土器出土数上位遺跡の連担分布域

遺跡が連担(密集)している領域は、律令国家の組織活動が濃密に行われていた領域を示すものと考えます。

より具体的には、官人の下で働いたホワイトカラー的人口が一定以上存在した領域を示すものと考えます。

組織活動がある領域に集中して存在していたために、その場所が結果として、上記遺跡連担分布域として表現されたと考えます。

律令国家の組織活動が行われた領域は、風景的には掘立柱建物をメインとする集落が連担していた場所であると考えます。

その場所は建物利用的にはゾーン毎に機能を異にする計画的建物利用が行われていたと考えます。

組織活動の内容としては、連担分域毎に政治行政、軍事・輸送、鉄・食料・衣服等生産などのいずれかに特化していたような印象を受けます。連担分布域はそれぞれメインの役割が明確であったと考えます。


律令国家の組織活動が行なわれた領域は、官人の活動領域ですから銙帯の出土と重なり、鎮護国家の観点からの活動により寺院遺構等の出土と重なると考えます。


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