2015年6月24日水曜日

八千代市北海道遺跡出土墨書土器の文字の意味(想定)

花見川地峡史-メモ・仮説集->3花見川地峡の利用・開発史> 3.4〔仮説〕律令国家の直線道路、東海道水運支路の検討>3.4.156 八千代市北海道遺跡出土墨書土器の文字の意味(想定)

八千代市北海道遺跡出土墨書土器の文字についてゾーン別に出土数をまとめると次のようになります。

北海道遺跡ゾーン別墨書土器の文字
千葉県墨書土器データベース(明治大学日本古代学研究所)により集計。
「釈文」欄が□(不明)の史料は除く。
A12〓、A13〓は記号のような墨書。

この情報からゾーン毎に代表的な文字を抽出してゾーン図に記入すると次のようになります。

ゾーン別墨書土器の代表文字

参考 白幡前遺跡・井戸向遺跡のゾーン別墨書土器の代表文字

冨と万に○の2つの文字が全ゾーンを通じてメインであることがわかります。とりわけ、冨が北海道遺跡を代表する文字となっています。

北海道遺跡は発掘調査報告書では遺構分布を8群に分けていますが、墨書土器の文字という観点から観察すると、白幡前遺跡にようなゾーン別特徴(多様性)はみられません。

この代表文字の意味イメージ(想定)を地図に書き込むと次のようになります。

ゾーン別墨書土器代表文字の意味イメージ(想定)

参考 白幡前遺跡・井戸向遺跡のゾーン別墨書土器代表文字の意味イメージ(想定)

経済繁栄を祈願する文字が遺跡全体のメインということになりますから、白幡前遺跡とは明らかに異なった社会が存在していたと考えられます。

墨書土器指標と建物指標のクロスによる遺跡評価ではⅣゾーンだけが業務地区、それ以外の全ゾーンが一般集落地区となりました。そして、考察で一般集落地区のメインであるⅢゾーンは農業開発拠点の居住地区、Ⅳゾーンは同じ農業開発拠点の倉庫地区と考えました。

このような評価結果・考察とメイン墨書土器文字「冨」は合致します。
北海道遺跡は全体として経済活動がメインであった集落と考え、経済繁栄が最優先であったと考えます。

万に○(戦勝祈願)が冨と一緒に多出する理由は、北海道遺跡(農業開発拠点)が白幡前遺跡(軍事基地)の管理下で行われていたからだと考えます。
白幡前遺跡を拠点とする律令国家の行政組織から派遣された官人が、軍事基地を支えるための農業開発を行ったと考えます。
律令国家は蝦夷戦争の勝利のために軍事兵站・輸送基地(白幡前遺跡)の強化を図り、その一環として基地周辺の農業開発を行ったと考えます。

ですから、官人は冨(経済繁栄=収穫物増大)と万に○(戦勝祈願)の双方を墨書土器の文字として使ったのだと思います。

北海道遺跡の墨書土器文字に白幡前遺跡のゾーンを代表する文字がかなり出土していて、それは北海道遺跡が白幡前遺跡の強い影響下(配下)にあったことを物語っていると考えます。

白幡前遺跡の各ゾーンを代表する文字として次のものが北海道遺跡で出土しています。
生 (白幡前遺跡1A・1B・2B)
継 (白幡前遺跡1B・2A)
○ (白幡前遺跡1A)
廓 (白幡前遺跡2D・3)
廿 (白幡前遺跡2F)
入 (白幡前遺跡2E)

なお、北海道遺跡では文字を2文字連続して書いている史料が多くみられます。
例 冨冨、成成、入入、継継、木木、くく、大田大田、"朝日村神丈□朝日"、仁仁、山山、善善

北海道遺跡に特有の現象のように感じます。その理由は今後の検討課題ですが、北海道遺跡が白幡前遺跡の影響を受けて、二次的に派生した集落であると考えますが、そのことと関係する現象であると想像します。

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