2015年6月1日月曜日

File Maker版小字地名データベースの試作

小字地名データベース作成活用プロジェクト 15

1 File Maker版小字地名データベースの試作
千葉県地名大辞典(角川書店)附録小字一覧のうち千葉市、船橋市、佐倉市、習志野市、八千代市、四街道市分の大字・小字の文字表記をルビをセットにして、電子化集成してFile Maker版小字地名データベースを試作しました。

データベースの項目は次の通りです。
●小字
●小字よみ
●大字
●大字よみ
●市町村
●市町村よみ
●区
●区よみ
●所在地表記
●備考

データベースの画面(File Maker画面)

基本的な項目だけのシンプルな内容ですが、なんとなく本格的なデータベースらしくなってきました。
将来は、説明情報、関連情報、出典等の項目を付加することも考えられます。

6市分で小字データ数は7709件です。

2 検索
ExcelやエディタとちがってFile Makerでの検索は大変効率的で使いやすく、Excelやエディタで検索する状況に戻ることが出来なくなりました。

検索例1 「シラハタ」の検索
シラハタ地名は秦氏との関係から興味を持っています。(2015.02.12記事「ハタ地名検討の重大な意義に気がつく」等参照)

シラハタ(白旗、白幡など)を検索すると次の18データがヒットしました。

シラハタの検索結果(Excel出力画面)

File Makerでは「小字よみ」項目で「シラハタ」で検索して、その結果に「小字」項目で「白幡」などを検索して検索結果を追加して拡大することができます。(船橋市分のデータには小字ルビがもともとないので、「シラハタ」だけでは漏れてしまいますが、漢字による検索も同時併用できるので、File Makerの使い勝手には関心します。)

このExcel出力結果をさらにcsvに変換してアドレスマッチングしてGISにプロットするとつぎのようになります。

「シラハタ」を含む小字の分布

プロットした場所は正確な位置ではありませんから、「公式」な情報にはできませんが、プライベイトな検討を進める上で、概略分布図があるとないとでは思考効率が全く違ってきます。

秦氏と製鉄、妙見信仰、水運などとの関係も興味のあるところですが、(2015.02.08記事「古墳時代の鍛冶遺跡-妙見信仰-秦氏」参照)、地名に見る「金」(かね、かな)、「妙見」などの情報も検索は簡単にできます。

参考 「金」を含む小字の分布

参考 「妙見」を含む小字の分布

小字の分布だでけで確実なことがわかるわけではありませんが、多くのヒントを得ることが出来る可能性があります。
おそらく、小字情報(データベース)が無い場合と有る場合を比較すると、有る場合の発想力の方が各段に豊かであると考えます。

検索例2 「熊」の検索
幕張にある地名「奈良熊」の熊(くま)は供米(くまい)の転であると考えました。その場所が中央直轄の開発地だった可能性を考えています。「奈良熊」「実籾田」の地名は勅旨田開発の場所であることを伝えていると考えました。(2015.05.06記事「千葉市花見川区幕張の小字地名「奈良熊」「実籾田」は勅旨田開発か」参照)

このような興味から、例として「熊」を検索してみました。

「熊」の検索結果(Excel出力画面)

9データがヒットしました。幕張・武石以外の「熊」地名についても、その場所が奈良・平安時代の開発地であるのか、興味が湧きます。

「熊」を含む小字の分布

検討例3 「牛」、「ウルシ」の検索
最近の検討で殺牛祭神の風習が八千代市と四街道市の地名として残っていることがわかりました。(2015.04.21記事「八千代市白幡前遺跡 古代寺院関連地名」、2015.05.09記事「四街道市小字地名データベース完成」)
さらに別の場所に牛に関わる地名が無いか検索してみたところ、全部で20件のデータがヒットしました。今後これらのデータについて古代の殺牛祭神と関わりがあるものがあるか、検討したいと考えています。

「牛」検索結果の分布

「ウルシ」の検索をしたところ6データがヒットしました。これらのウルシ地名がいつ生まれたのか今後検討したいと思っています。縄文時代の活動が地名として残っているかどうかが興味のポイントです。

「ウルシ」を含む小字の分布

3 今後の展開
角川千葉県地名大辞典附録小字リストの電子化作業が思いの他高効率化し、また墨書土器検討を通じてFile Makerというデータベースソフトと出会い、本格的なデータベースに通じる千葉県小字地名データベースの作成が軌道に乗ってきました。
今後電子化した市町村は順次File Maker版データベースに集成して、検索領域を広げて行きます。
下総国領域付近全体をカバーする程度になれば、使い勝手は相当良くなり、東海道水運支路仮説の検討に大いに役立つ場面が生まれると考えます。

0 件のコメント:

コメントを投稿