2015年7月20日月曜日

萱田遺跡群の紡錘具 その2

花見川地峡史-メモ・仮説集->3花見川地峡の利用・開発史> 3.4〔仮説〕律令国家の直線道路、東海道水運支路の検討>3.4.172 萱田遺跡群の紡錘具 その2

竪穴住居100軒あたり紡錘具出土数を萱田遺跡群のゾーン別にもとめ、図示しました。

竪穴住居100軒あたり紡錘具出土数
紡錘具出土数及び竪穴住居数を各遺跡発掘調査報告書より読み取り、作成。
地図の基図は八千代市都市計画基本図(昭和38年測量)(八千代市都市計画課より複製承認済)

白幡前遺跡は他の3遺跡と比べると紡錘具の出土が多いのですが、よく見ると白幡前遺跡の中心である2Aゾーン(寺院及び接待施設が存在)は紡錘具の出土が最も少なくなっています。寺院関係者や集落支配層のトップクラスの家族は紡錘具を使って糸を撚り、その糸で機織りして布を作り、その布を縫製して自らの被服を調達するという自給自足的生活を免れていたと考えられます。

北海道遺跡では紡錘具の出土がⅣゾーンに限られています。これから、北海道遺跡では遺跡内(集落内)で分業体制が敷かれ、Ⅳゾーンでのみ紡績(糸撚り)、機織り、縫製を行っていたと考えます。Ⅳゾーンには掘立柱建物が集中しますので、この建物を利用して機織りが行われていたと考えます。
竪穴住居が多いⅢゾーンには掘立柱建物が1軒しか存在しいないため異様に感じていましたが、紡錘具出土も偏っていることから、遺跡内(集落内)分業体制が行なわれていたことが判明しました。
Ⅲゾーンは居住するだけの場所、Ⅳゾーンは生活用品をつくる場所だったのです。

次に参考として、これまでに検討したTとSの分級によるゾーン特性の検討を掲載します。

参考 TとSの分級によるゾーン特性の検討
TとSの分級によるゾーン特性の検討は2015.07.03記事「権現後遺跡の墨書土器と建物指標によるクロス評価」等の記事で詳しく説明しています。

この結果から「業務地区」と判定したゾーンの多くが竪穴住居100軒あたり紡錘具出土数の値が大きいことがわかりました。
「業務地区」と考えたゾーンは特定ミッションを持った小集団が活動していた場所であると考えますが、そのような場所では、小集団毎に紡績(糸撚り)、機織り、縫製のプロセスを自給自足的に実施していたことがわかります。

次の図は鉄製紡錘具出土ゾーンを示したものです。

鉄製紡錘具出土ゾーン

鉄製紡錘具出土ゾーンでは自分が使う被服だけでなく、陸奥国へ向かう将兵のための軍服をつくっていた可能性があります。
鉄製紡錘具は高機能紡錘具であり、高機能機織り機械、鉄製ハサミ等と一緒に官が支給して、白幡前遺跡が軍服・被服工場であった可能性が濃厚です。

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