2015年7月3日金曜日

権現後遺跡の墨書土器と建物指標によるクロス評価

花見川地峡史-メモ・仮説集->3花見川地峡の利用・開発史> 3.4〔仮説〕律令国家の直線道路、東海道水運支路の検討>3.4.161 権現後遺跡の墨書土器と建物指標によるクロス評価

八千代市権現後遺跡のこれまでの検討で、「竪/掘」値(T)の分級(2015.06.29記事「八千代市権現後遺跡の「竪/掘」値(タテホリチ)」参照)と墨書土器対竪穴住居出土率(S)の分級(2015.07.02記事「八千代市権現後遺跡の墨書土器出土状況」参照)を行いました。

このTとSの分級図を並べてみると次のようになります。

権現後遺跡のTとSの分級図

この分級結果に基づいて、TとSのクロスによるゾーン評価をしました。
ゾーン評価基準(試案)は2015.06.12記事「墨書土器指標を用いた遺跡評価思考実験」で検討したものです。

権現後遺跡 TとSのクロスによるゾーン評価基準(試案)と評価結果

参考 北海道遺跡 TとSのクロスによるゾーン評価基準(試案)と評価結果

参考 井戸向遺跡 TとSのクロスによるゾーン評価基準(試案)と評価結果

参考 白幡前遺跡 TとSのクロスによるゾーン評価基準(試案)と評価結果

この評価結果を分布図にすると次のようになります。

権現後遺跡 TとSのクロスによるゾーン特性の検討

参考 北海道遺跡 TとSのクロスによるゾーン特性の検討

参考 白幡前遺跡・井戸向遺跡 TとSのクロスによるゾーン特性の検討

権現後遺跡ではⅡゾーンが業務地区、Ⅰ・Ⅲ・Ⅳゾーンが特殊地区となります。

業務地区と想定したⅡゾーンを取り囲むように特殊地区想定Ⅰ・Ⅲ・Ⅳゾーンが取り囲みます。

このような分布特性は北海道遺跡と同じです。北海道遺跡では業務地区Ⅳゾーンの回りを一般集落地区Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ・Ⅴ・Ⅵ・Ⅶ・Ⅷゾーンが取り囲みます。

北海道遺跡では、全体が律令国家直営(=官人による)農業開発地区と見立て、業務地区はいわば産物を蓄えるための倉庫地区、一般集落地区は居住地区と考えました。

北海道遺跡のアナロジーで考えると、権現後遺跡も特殊地区Ⅰ・Ⅲ・Ⅳゾーンが何らかの機能地区で、その産物や備品の倉庫地区が業務地区であると考えることができます。

実はそのように考えるだけの有力な証拠があります。権現後遺跡には7つの土器焼成坑があるのです。

権現後遺跡が白幡前遺跡本社の土器生産支社である可能性が浮かび上がります。

本当にそうであるのか、詳しくは次の記事で検討を深めます。

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情けないことに、この記事を書いている時に、手元に権現後遺跡の報告書がないのです。遺跡発掘調査報告書の閲覧には本当に苦労します。

遺跡発掘調査報告書がpdfデータとしていつでも自由に入手できる時代がいつかやってくることを夢見ます。

土器焼成坑の場所やその記載情報を入手してから、続きの検討記事をアップします。

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