2015年11月23日月曜日

香取社の影響圏を示す地名 香取

小字地名データベース作成活用プロジェクト 38

千葉県北部34市町の小字データベースの試用として、「カトリ・カンドリ」(香取)について予備的な検討をしてみました。

2015.08.16記事「小字DB活用効果の展望 1(例 香取)」ですでに検討していますが、データ数が2万から倍以上増えているので、再度同じ検討をしてみました。

データベースで香取(読みカトリ・カンドリ)をキーワードに検索すると11市町に37件がヒットしました。

これらの小字をアドレスマッチングで地図にプロットしてみました。

千葉県北部34市町 カトリ・カンドリ(香取)の分布(アドレスマッチングによる)

8月の検討では太平洋岸の分布状況が判らなかったのですが、今回の検討で、太平洋岸にも小字香取の分布を確認できました。

さらに、上記分布図と下総国領域図を重ねることによって、小字香取がすべて下総国領域内に分布することが判りました。

千葉県北部34市町香取の分布は全て下総国領域内に位置する

香取の地名は香取社が存在していて、水運上の関(徴税所)となり、香取社の影響圏であることを物語っています。

その有様の中世の状況を示した研究例を次に示します。

参考 中世香取社と浦・海夫・関
一部書き込み

この参考図には海夫注文に載る香取の海の津と市川から松戸にかけての太日川(現在の江戸川)の河関が掲載されています。

しかし、地名からみると野田市付近の太日川と香取の海西端(蘭沼)の連絡部[現在の江戸川と利根川の連絡部]付近に多数の香取地名が存在していて、交通の要衝(香取の海と東京湾水系の連絡)であり、香取社の影響が強かったと考えます。

香取の海と手賀沼の合流部付近にも香取地名がありますから、この場所も香取の海から手賀沼経由で東京湾水系に出る場所で交通の要衝です。

八千代市に香取地名がありますが、この場所は印旛浦から平戸川(現新川)を遡り、支川の桑納川畔に位置します。この場所もここを経由して市川方面に抜けた陸路(船越)が存在していたと考えます。

市川市柏井町(カシワイ=杵隈=船着き場)を通るルートになりますから、八千代市香取と市川市柏井が関係する可能性もあります。(2015.11.19記事「古代船着き場を示す「かし」」参照)

九十九里浜(横芝光町)に香取地名があります。この場所も水運交通の要衝であったと考えますが、香取の海との連絡は下図のC、D船越を経由していたと考えます。

ふなこし(船越・舟越)の意味の想像

学問的厳密さとか、時代の特定はありませんが、地名香取に関して香取社の影響圏と関連する水運路をイメージすることが出来ましたので、絵にしておき、今後の検討における1ステップとして利用します。

小字香取分布から類推する香取社の影響圏と関連水運路(千葉県北部34市町のみを対象とする)

香取地名の分布が判っただけでも、小字データベース作成意義が大きなものであることがわかります。

千葉県小字データベースが全部完成した時、香取という小字が千葉県南部にも分布するのか、しないのかわかります。

その時、香取の地名について本検討を行い、自分にとって有用な情報を汲み取りたいと思います。


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