2016年8月21日日曜日

上谷遺跡 出土遺物GISデータ作成

墨書土器GISデータベースに続いて、墨書土器以外の出土遺物GISデータを作成しました。

1 上谷遺跡出土遺物GISデータの作成

GIS上の上谷遺跡遺構プロット図をcsvファイル出力するとその中に位置情報(緯度、経度)が含まれます。

この位置情報を含んだ遺構リストに発掘調査報告書に掲載されている遺物の数を項目毎に全て書き込みました。

位置情報を含んだ次のような遺物リストが完成しました。


上谷遺跡出土物GISデータ

このリストをcsv出力してGISに取り込めば遺物項目別分布図ができます。

この記事では上谷遺跡の概況を知ることとし、土器数、金属遺物数、全遺物数について検討します。

2016.08.20記事「上谷遺跡 墨書土器集中出土域と掘立柱建物群との関係」で墨書土器集中出土空間が掘立柱建物群と密接な関係にあることを明らかにしました。

最初に参考として墨書土器分布と掘立柱建物群との関係を再掲します。

2 参考 上谷遺跡 墨書土器

上谷遺跡の遺構別墨書土器出土数を円グラフで表現し、次いで、その図に掘立柱建物をオーバーレイ表示しました。

参考 上谷遺跡 墨書土器数円グラフ

参考 上谷遺跡 墨書土器数円グラフと掘立柱建物分布オーバーレイ

この情報から、墨書土器活動つまり集落生業集団が行う集団的祈願活動は掘立柱建物群近くの広場を中心に展開されていたことを想定できました。


3 上谷遺跡 土器

遺構別土器出土数を円グラフで表現すると次のようになります。

上谷遺跡出土土器数円グラフ

墨書土器は掘立柱建物群近くに集中して分布していました。

土器全体でみると、竪穴住居全体に分布しているとともに、集中出土域はやはり掘立柱建物群近くになっています。

土器は水の汲み置き、炊事や食事の食器として生活に必須ですから竪穴住居分布に密接にかかわるにも関わらず、密集出土域が掘立柱建物群近くであるということは、墨書土器活動の影響が強く表れているものと考えます。

つまり、実用機能を有する土器の分布は竪穴住居分布と似てくると考えますが、掘立柱建物群近くに土器集中域があるということは、掘立柱建物群近くの空間(広場)が集団が執り行う祭祀(酒宴)の場であり、人々が自分の竪穴住居から土器(墨書土器)をもちより、その場で打ち欠き捨てた(埋めた)のだと思います。

掘立柱建物群近くで祭祀(酒宴)が継続的に行われたため、その空間で土器出土が多くなっているのだと想定します。

上記分布図い掘立柱建物をオーバーレイすると次のようになります。

上谷遺跡出土土器数円グラフと掘立柱建物分布オーバーレイ

4 上谷遺跡 金属遺物

遺構別金属製品遺物出土数を円グラフで表現すると次のようになります。

上谷遺跡金属遺物数円グラフ

金属製品遺物とは紡錘車、穂積具、鎌、鍬、鉈、刀子、鉄鏃、鍵、釘、銙帯、馬具、不明品などを含みます。

これらの金属遺物は生産活動や集落防衛のために重要な道具ですから、その出土空間は集落機能上の重要ケ所を表現していると考えて間違いないと思います。

金属遺物全体の分布を見るとそのパターンが墨書土器分布のパターンと似ていることに着目せざるをえません。

上記分布図に掘立柱建物分布をオーバーレイすると次のようになります。

上谷遺跡金属遺物数円グラフと掘立柱建物分布オーバーレイ

生産活動や防衛活動の重要ケ所が掘立柱建物群近くにあるということが判明しました。

5 上谷遺跡 全遺物

遺構別全遺物出土数を円グラフで表現すると次のようになります。

上谷遺跡出土遺物数円グラフ

墨書土器、土器、金属遺物というくくりで見た時、その分布の集中域が全て掘立柱建物群近くであるのですから、全遺物というくくりにしても、当然ながらその集中域は掘立柱建物群近くになります。

上谷遺跡出土遺物数円グラフと掘立柱建物分布オーバーレイ

上谷遺跡は掘立柱建物群が集落機能上の中心に位置づけられていたとイメージできると思います。

次の記事から遺物個別項目や墨書土器文字の出土状況を分析して、上谷遺跡の生業が何か、それと墨書文字集団との対応があるかなどについて検討します。





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