2017年4月12日水曜日

大膳野南貝塚 前期後葉集落 獣骨

大膳野南貝塚前期後葉集落の獣骨出土状況について学習します。

獣骨出土は6軒(J10、42、56、58、97、98)の住居で観察されています。
このうちJ42、58、98は極少の獣骨が出土し、J10、56、97からはイノシシ、シカを主体とする大量の獣骨が出土しています。
次に発掘調査報告書の記述を引用します。

J10号 竪穴住居
獣骨は住居中央の径約2 × 3 mの範囲から出土しており、総量は中テン箱で1 箱弱を数える。
出土層位は住居下層から中層(J10号住3 ・4 層)であり、諸磯b式古段階および浮島Ⅰ式土器が共伴する。
これらは住居の埋没が進行した過程で、凹地状となった住居跡地に廃棄されたものと推定される。
獣骨の分布状態はやや散漫で、とくに獣骨が集中している箇所はみられない。
獣骨の大半は破片資料で、保存状態は不良である。
同定された獣骨はイノシシ・シカで、最少個体数はイノシシ6 頭、シカ4 頭である。

J10号 獣骨出土状況
千葉市大膳野南貝塚発掘調査報告書から引用

J56号 竪穴住居
本住居は大膳野南前期集落では最大の住居で、平面規模は7.2×5.5m、深さは90㎝を測る。
 獣骨は住居中央の径約4.6×2.5mの範囲から完形個体を含む浮島Ⅱ~Ⅲ式土器群に伴って出土しており、総量は中テン箱で約4 箱を数える。
出土層位は住居最下層(J56号住東-西13層、南-北20層)で、住居埋没過程の比較的早い段階に土器とともに廃棄されたものと推定される。
獣骨の分布状態は濃密であるが、保存状態は不良で、大半の個体は骨体表面が磨滅している。
また、獣骨を含有する土層の厚さは約30㎝を測り、本址における獣骨廃棄は継続的に行われていた可能性が考えられる。
同定された獣骨はイノシシ・シカで、最少個体数はイノシシ5 頭、シカ4 頭である。

J56号 獣骨出土状況
千葉市大膳野南貝塚発掘調査報告書から引用

J97号 竪穴住居
獣骨は住居中央の径約1.6mの範囲に集中して出土した。獣骨の総量は中テン箱で約6 箱を数え、本遺跡の前期集落では最多となる。
出土層位は住居最下層に該当するハマグリ主体の混貝土層(J97号住4 層)であり、諸磯b式土器が共伴する。
これらは前述したJ56号住と同様に住居埋没過程の比較的早い段階に廃棄されたものと推定される。
獣骨の分布状態は極めて濃密で、復元可能な頭骨が複数個体含まれており、保存状態は良好である。
貝層の存在が獣骨の遺存状態に影響を与えたものと推定される。
獣骨はイノシシ・シカが主体で、最少個体数はイノシシ9 頭、シカ5 頭である。
また、イノシシ・シカ以外にイヌ4 点、タヌキ7点、ノウサギ2 点などが同定された。

J97号 獣骨出土状況
千葉市大膳野南貝塚発掘調査報告書から引用

獣骨出土量(中テン箱数)を分布図にすると次のようになります。

大膳野南貝塚 前期後葉 獣骨出土量(中テン箱数)

J56とJ10から獣骨が出土することの意味については、これまでの土器や石器の出土状況からそれなりに説明できる(強い違和感なしに自分自身を納得させることはできる)と思います。

ところが獣骨出土が最大のJ97はこれまでの検討では獣骨多量出土をイメージできない竪穴住居です。強い違和感を覚える竪穴住居です。

次表に数値を示すように、J97は石器出土が完全にゼロの竪穴住居です。

大膳野南貝塚 前期後葉 獣骨出土量

J97号竪穴住居がなぜ獣骨出土量が最大になるのか?
さらにJ56、J10から獣骨が出土する理由や、他の竪穴住居から獣骨がほとんどあるいはまったく出土しない理由はなにか?
そもそも竪穴住居から獣骨が出土する意味はなにか?
次の記事で検討します。

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