2017年6月4日日曜日

西根遺跡 特大加曽利B式土器の意味

西根遺跡では加曽利B式土器を平面配置することにより祭祀造景空間をつくったと考えています。

その空間づくりにおいて特大土器(最大径45㎝以上)は特別な役割を持っていたと考えますので、各集中地点別に順次検討することにします。

この記事では第1集中地点について検討します。

第1集中地点からの特大加曽利B式土器は8器出土しています。
その分布を次にまとめました。

特大加曽利B式土器(最大径45㎝以上)の分布 第1集中地点
小グリッド色分けは出土土器総重量区分
画像は発掘調査報告書「印西市西根遺跡」から引用

特大加曽利B式土器の出土状況を次のように観察することができます。
・大局的には土器総重量大のグリッド(土器密集グリッド)付近に特大加曽利B式土器が分布します。大局的には特大加曽利B式土器は土器密集域付近に選択的に出現すると言えます。
・1小グリッド(2m×2m)に1器出土例だけであり、特大加曽利B式土器が小グリッド内で密集することはありません。特大加曽利B式土器はお互いがある程度離れて置かれています。
・詳しく特大加曽利B式土器の分布をみると、土器総重量が中、小のグリッドにも分布しています。特大加曽利B式土器が置かれていても、その周辺が土器密集域になっていないところもあることがわかります。

次に特大加曽利B式土器の分布を獣骨重量分布図にプロットしてみました。

獣骨重量分布図 第1集中地点 特大加曽利B式土器分布プロット

獣骨分布が最も多い小グリッドには特大加曽利B式土器の分布はありません。特徴的な事象です。
しかし、大局的には獣骨重量分布と特大加曽利B式土器分布の相関は否定できないところです。

以上の観察から第1集中地点では特大加曽利B式土器情報に関連して次の見立てをメモしておきます。

1 大局的には土器総重量、獣骨重量、特大加曽利B式土器の分布は相関していると考えます。
2 子細に観察すると土器総重量、獣骨重量、特大加曽利B式土器の分布にズレがあり、そのズレは土器集中域内の機能別空間を表現している可能性があると考えます。

この機能別空間ゾーンについて、第1集中地点のイメージをまとめてみました。

祭祀造景空間主要部ゾーニングの可能性 第1集中地点の見立て(2017.06.04)

Aゾーンは特大加曽利B式土器を伴う土器密集高ゾーンであり、一般祭祀参加者が土器を「奉納」したゾーンです。

Bゾーンは特大加曽利B式土器土器を伴う土器密集低ゾーンであり、祭祀主催者が特大土器で区画したゾーンであり、祭祀アクティビティーの場(祈祷、踊り、…)であると考えます。

Cゾーンは特大加曽利B式土器を伴わない獣骨密集ゾーンであり、獣肉調理肉食祭祀の場であると考えます。

Dゾーンは特大加曽利B式土器を伴わない土器密集低ゾーンであり、祭祀主要部から離れた周辺の風景を小土器送り場を配置することにより造景(修景)した空間であると考えます。(A~Dゾーンには送り土器だけでなく、立木や丸太でできた祭壇(イナウ列)がそれぞれ配置され、祭祀空間にふさわしい風景が作られていたと考えます。)

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