2018年2月13日火曜日

分析作業メモ3 獣骨数の分布

大膳野南貝塚後期集落の出土物による竪穴住居検討 23

2018.02.11記事「分析作業メモ 中テン箱数の分布」を出発点にして中テン箱数、石器数と指標について順次漆喰貝層有無別に立体グラフで観察しています。この記事では獣骨数について観察します。

1 竪穴住居別獣骨数の分布

漆喰貝層有竪穴住居の獣骨数 1

参考 漆喰貝層無竪穴住居の獣骨数 1
グラフにおける漆喰貝層無竪穴住居の獣骨数はきわめて少数であり、漆喰貝層有竪穴住居と同じスケールで表現できません。そのため漆喰貝層無竪穴住居の獣骨数の表現は漆喰貝層有竪穴住居の10倍のスケールにして参考として表現しています。

漆喰貝層有、無竪穴住居の獣骨数 1
漆喰貝層無竪穴住居の表示は漆喰貝層有竪穴住居の10倍です。

漆喰貝層有竪穴住居の獣骨数 2

参考 漆喰貝層無竪穴住居の獣骨数 2
グラフにおける漆喰貝層無竪穴住居の獣骨数はきわめて少数であり、漆喰貝層有竪穴住居と同じスケールで表現できません。そのため漆喰貝層無竪穴住居の獣骨数の表現は漆喰貝層有竪穴住居の10倍のスケールにして参考として表現しています。

漆喰貝層有、無竪穴住居の獣骨数 2
漆喰貝層無竪穴住居の表示は漆喰貝層有竪穴住居の10倍です。

2 考察
2-1 獣骨出土の意味
獣骨が多量に出土する竪穴住居は漆喰貝層有竪穴住居にかぎられています。獣骨数が100以上出土する竪穴住居は9軒でありそのうち7軒が廃屋墓または人骨が出土し廃屋墓の可能性が濃厚な竪穴住居です。2018.01.12記事「獣骨多量出土竪穴住居は廃屋墓」参照

参考 獣骨出土数100以上の竪穴住居

参考 獣骨多量竪穴住居の様子 1

参考 獣骨多量竪穴住居の様子 1

参考 獣骨多量竪穴住居の様子 1

獣骨数が多量に出土する竪穴住居は廃屋墓あるいは廃屋墓の可能性が高い竪穴住居である
ことから、葬送に関連する祭祀で獣肉がふるまわれ、残った骨を竪穴住居の中に残したものと考えます。
獣肉食は祭祀における特別のご馳走であったと考えることができそうです。

獣骨数が多い竪穴住居は南貝層と北貝層付近に集中しているので、南貝層と北貝層という貝層の被覆が獣骨の保存に大きな役割を果たしているものと推察できます。
南貝層と北貝層から外れ、竪穴住居覆土層の中の貝層・混貝土層(地点貝層)だけに覆われた廃屋墓から獣骨出土数が少ないのは、貝成分による被覆が弱く獣骨が融けてしまったことが関わっているからだと推定します。

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特別メモ
J63、J81、J78、J80竪穴住居からはヒト骨が出土します。発掘調査報告書では獣骨出土の項目の中で記述されています。
このヒト骨出土の意義について発掘調査報告書では検討されていません。
現時点ではヒト骨出土はその竪穴住居でヒトの埋葬が行われたにもかかわらず、ヒト骨が保存される環境が劣悪であったため骨のほとんどが消失し、発掘時に埋葬という状況が観察できなかったものと考えます。
一方、出土ヒト骨の形状等の観察記載は発掘調査報告書では完全にゼロです。そのためヒト骨が人肉食の結果である可能性を完全に否定できません。
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2-2 漆喰貝層無竪穴住居から獣骨出土が少ない理由
漆喰貝層無竪穴住居からの獣骨出土は極めて少量ですがその分布をみるとほとんど南貝層と北貝層付近だけです。この様子は漆喰貝層無竪穴住居に獣骨が置かれた後、運よく南貝層と北貝層に覆われて残ったことを表現していると考えます。
土器(関連指標として中テン箱数)や石器など腐らないものの出土自体が漆喰貝層無竪穴住居では少ないので、もともと置かれた獣骨数も少ないと考えられますが、漆喰貝層無竪穴住居の獣骨出土数は竪穴住居が覆土される直前の数より大幅に少なくなっていると推定します。

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※ 画像の差し替え 2018.02.14
竪穴住居別獣骨数の一部に集計ミスが見つかり、この記事の全ての画像を正確な画像と差し替えました。
2018.01.12記事「獣骨多量出土竪穴住居は廃屋墓」の全画像も正確な画像と差し替えました。
両方の記事ともに内容大要に変化はありません。
なお、竪穴住居別獣骨数とは発掘調査報告書の竪穴住居別記述に書かれている獣骨数です。

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