2018年2月14日水曜日

竪穴住居の漆喰貝層有無別検討に関する考察メモ

大膳野南貝塚後期集落の出土物による竪穴住居検討 24

これまでの検討で、竪穴住居を漆喰貝層有無別に区分して遺構や出土物等の指標を整理するとその違いが際立ちます。あたかもメイン生業が異なる2つの集団、つまり竪穴住居に漆喰と貝殻や貝製品を残す集団と漆喰と貝殻・貝製品を全く残さない集団が1つの集落に混在します。そして漆喰貝層有竪穴住居群の分布は円環構造をなし、漆喰貝層無竪穴住居群は円環構造と無関係に分布します。

この2つの集団と見えるものが本当に生業や出自にかかわるような別集団であるのか、また2つの集団の関係がどのようなものなのか疑問が湧き、その疑問を解くべく躍起になっています。
しかしこれまで漆喰貝層有無別に中テン箱数、石器数、獣骨数を検討してきて、ますます2集団の際立つ差異を把握できてきていますがその関係は謎です。

そこでこの記事では漆喰貝層有無別指標整理作業から離れて、2集団の差異についてその意味を中間的に考察して、今後の検討方向を探る参考にするためにメモしました。

1 貝層の存在が出土物多寡要因になっていないか?
出土物の多い竪穴住居は南貝層と北貝層付近に集中しています。このことから貝層に覆われた竪穴住居は後世の削平を受けにくく、そのために出土物が多く、貝層に覆われていていない竪穴住居は後世の削平を受けやすく、そのために出土物が少ないという現象が存在するかどうか確かめる必要があります。
具体的には貝層に覆われない地区と貝層の覆われた地区の削平の受けやすさ等を比較をする必要があります。

漆喰貝層無竪穴住居からの出土物がとても貧弱であり、それを持って漆喰貝層無竪穴住居は「貧しかった」と判断していますが、この考えに大きなバイアスが働いているのかないのか検証する必要があります。

2 漆喰貝層有竪穴住居と漆喰貝層無竪穴住居の重複関係はあるか?
竪穴住居の重複関係が各所で見られますが漆喰貝層有竪穴住居と漆喰貝層無竪穴住居の重複関係を調べれば漆喰貝層有竪穴住居群と漆喰貝層無竪穴住居群の関係性のヒントが得られるかもしれません。
ざっと地図を見ると重複は漆喰貝層有竪穴住居の間あるいは漆喰貝層無竪穴住居の間で見られるものが多く、次いで漆喰貝層無竪穴住居を漆喰貝層有竪穴住居が切るものが多いようです。その意味がわかるかどうか検討します。
重複が漆喰貝層有竪穴住居の間あるいは漆喰貝層無竪穴住居の間で見られるものが多いことから漆喰貝層有竪穴住居家族と漆喰貝層無竪穴住居家族はそれぞれ同じ場所に代々少しずつ場所を変えて住居を構えたようです。そうならば、2つの異なる集団が1つの集落に同居していて、お互いに侵害しない(できない)関係性があったと言えるかもしれません。2つの集団がそれぞれ既得土地所有権を確保していたのかもしれません。

漆喰貝層有竪穴住居と漆喰貝層無竪穴住居の分布
漆喰貝層有竪穴住居…青、漆喰貝層無竪穴住居…ベージュ

3 漆喰貝層無竪穴住居の分布は台地西斜面、台地面、台地南斜面の3つに区分することに意義があるのではないか?
漆喰貝層有竪穴住居の分布は円環構造として捉えることができます。
漆喰貝層無竪穴住居の分布はその見かけの平面分布形状ではなく、地形特性(斜面と台地面)で分けて捉えるとその生業と結びつけて考えることが可能ではないかと直観します。
漆喰貝層無竪穴住居では漆喰貝層有竪穴住居と異なり谷津斜面下部までその分布が及びます。ここに漆喰貝層無竪穴住居の生業のヒントがあるような気がします。斜面林を生業の場(の一部)にしていたと判断できそうです。

地形区分

4 漆喰貝層無竪穴住居の台地中央面における小円環構造にも着目する
漆喰貝層無竪穴住居の台地中央面における小円環構造にも着目する必要があると考えます。漆喰貝層無竪穴住居群独自の構造形成が存在していたとすれば、漆喰貝層無竪穴住居群は漆喰貝層有竪穴住居群とは明らかに異なる集団であると捉えることができます。

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