2018年2月21日水曜日

漆喰貝層有無別石器数統計の再集計

大膳野南貝塚後期集落の出土物による竪穴住居検討 29

「後世の削平」影響を加味して竪穴住居出土石器数(石器合計数)を再集計してみました。

1 「後世の削平」影響を加味しないこれまでの石器数統計

漆喰貝層有無別石器数(全竪穴住居対象)
漆喰貝層有竪穴住居と漆喰貝層無竪穴住居では石器数平均値が7倍近くの開きとなり異常な感じを受けます。

漆喰貝層有無別竪穴住居分布(全竪穴住居対象)

2 「後世の削平」影響を加味した石器数統計(再集計)

漆喰貝層有無別石器数(覆土層有竪穴住居対象)
漆喰貝層有竪穴住居と漆喰貝層無竪穴住居では石器数の平均値は3.4倍近くの開きに縮まります。

漆喰貝層有無別竪穴住居分布(覆土層有竪穴住居対象)

3 考察
「後世の削平」により覆土層が無くなった竪穴住居はほとんど石器出土がありませんが、その値はその遺構が持っていた本来の石器数を示すものではありませんから、それを統計の母数に含めると間違った統計になります。
その間違った統計が1です。

「後世の削平」により覆土層が無くなった竪穴住居を除いて、覆土層が有る(一部残った)竪穴住居だけを対象に石器数統計を再集計したものが2です。
この統計で石器数平均値をみると漆喰貝層有竪穴住居が12.7、漆喰貝層無竪穴住居が3.7となり約3.4倍の開きのある関係になります。
漆喰貝層有竪穴住居の石器数平均値はサンプル数が多く信頼できる(意味のある検討ができる)と考えます。ところが漆喰貝層無竪穴住居はその多くが覆土層無竪穴住居としてこの統計から除外されていてサンプル数が少なく信頼性が落ちます。
また、具体的にみると台地崖(急斜面)の竪穴住居が5軒もふくまれています。これらの竪穴住居は斜面林管理などに関わる可能性のあるもので、台地面の竪穴住居よりも社会ランクが低いことが想定されます。石器数は竪穴住居廃絶祭祀の規模や回数に比例すると考えられますから、台地崖(急斜面)の竪穴住居は最初から台地面のものより石器数が少ないと想定できます。従って、漆喰貝層無竪穴住居の石器数平均値は本来の値と比べて小さくなっている可能性が濃厚と想定します。

このような想定から、漆喰貝層有竪穴住居の石器数が多く、漆喰貝層無竪穴住居の石器数が少ないという見かけの統計がそのまま漆喰貝層有無別竪穴住居の特性であると確実に判断できる状況にはないと考えます。
なお、集落創始期の竪穴住居は石器数がその後の時期より特段に多いという着目すべきデータがあります。2018.02.06記事「集落創始期は狩猟と漁労の二股であった 大膳野南貝塚後期集落」参照
その集落創始期の竪穴住居で覆土層有で漆喰貝層無竪穴住居のサンプルが少ないので(1例のみ)漆喰貝層有竪穴住居の石器数が漆喰貝層無竪穴住居の石器数より見かけ上多くなっている可能性があります。
現段階では、見かけの統計数値は脇に置いて、漆喰貝層有竪穴住居と漆喰貝層無竪穴住居の石器数平均値の間には有意な差は無いかもしれないと想像して、検討を進めることにします。

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