2018年3月14日水曜日

小ピットのある土坑

大膳野南貝塚後期集落 土坑の再検討 9

大膳野南貝塚後期集落の土坑について指標別に時期別分布の検討しています。これまでに指標「体積類型」、「平面形型」、「フラスコ状、円筒状」、「貝層、漆喰」について検討しました。
この記事では指標「小ピット」について検討します。

1 小ピットのある土坑
縄文時代後期と判断された土坑のうち2基に小ピットが付いていて着目することができます。

小ピットのある土坑分布

小ピットのある土坑 平面・断面 263号
発掘調査報告書から引用

小ピットのある土坑 平面・断面 398号
発掘調査報告書から引用

2 考察
ア 小ピットは建屋の存在を示す
小ピットの存在は土坑の上に建屋があったことを示しています。土坑に屋根と周囲を取り囲む壁があり、土坑が直射日光や風・雨・雪等から守られていたことを示しています。

イ 2つの小ピットのある土坑のタイプが異なる
2つの小ピットのある土坑が隣接していて、なおかつタイプが異なることに一つの着目点があると考えます。263号は土坑が浅く広く、建屋も広くなっています。398号は土坑が深く、建屋は土坑を囲うだけで広くありません。
263号は天気の変化に応じて迅速にモノを出し入れできるような機能を、398号は長期天候の変化の影響を受けにくいような機能をそれぞれ持っています。
生業活動で得た食物をその種類や加工方法の違いに応じて保存方法を使い分けることができるように、タイプが異なる(機能が異なる)2つの土坑が隣接して配置されていたと考えます。

ウ 屋外漆喰炉を使った生業活動の施設
小ピットのある場所近くに屋外漆喰炉が多数分布しています。

小ピットのある土坑と屋外漆喰炉
屋外漆喰炉では漁獲物の調理・製品化が行われていたと考えられます。屋外漆喰炉でつくられた保存用・交易用製品を一時あるいは長期保存するために建屋のある土坑(小ピットのある土坑)が利用されたと考えます。
土坑に建屋を設けることによって、単に保存貯蔵を安定して行うだけでなく、発酵などの高度な機能も備えていた可能性が濃厚であると推測します。

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