2018年5月20日日曜日

重要学習課題 貝殻・漆喰、獣骨・焼骨、土器破片

貝殻・漆喰、獣骨・焼骨、土器破片の意義の学習が大膳野南貝塚学習、縄文貝塚学習、縄文遺跡学習で特別重要であることにやっと気が付きましたので、忘れないうちにメモしておきます。

1 貝殻・漆喰
貝は毎年採っても翌年にはまた必ず採れる自然の恵みであり、その殻は自然再生の象徴として特別大切なモノ、粗末にできないモノであり、さらに再生の象徴、再生の場にふさわしモノであったのではないかと考えます。
貝殻自体に縄文人は祭祀性を感じていたのだと考えます。

貝殻・漆喰は特別な空間(遺構覆土層や地点貝層、貝層)に残されています。
また純貝層は少なく、多くは加工されています。破砕貝が多く、土と混合され貝の割合が多い場合や少ない場合があります。わざわざ貝殻を破砕して土と捏ね合わせ、その「製品」を使って遺構覆土層や地点貝層、貝層を「建設」しています。漆喰は現代世界からみても正に「製品」で、それで炉や床を「築造」しています。
これらの縄文人の行為はすべて貝殻の持つ再生呪力を期待して行ったのではないかと考えます。
純貝層・混土貝層・混貝土層で遺構を覆土するのは、その底に眠る遺体の再生を願い、あるいはその遺構廃絶(遺構の死)に伴う代替遺構の再生・機能発揮を願っていたのではないかと考えます。
漆喰炉や漆喰貼床は実用的な意味での高機能装置として築造したのではなく、死と再生祭祀の場に相応しい装置として建設・築造されたと考えます。
屋外漆喰炉、屋内漆喰炉、漆喰貼床は実用機能として見るのではなく、そこが祭祀活動の場であったとして見るのが本筋であると考えます。
地点貝層・貝層は廃絶遺構付近空間全体(生活空間全体)を覆うのもですが、それは人々の死と竪穴住居や土坑などの廃絶(死)に対して、それらの再生を願う気持ちから縄文人が行ったものと考えます。

2 獣骨・焼骨
獣も毎年獲っても翌年にはまた必ず獲れる自然の恵みであり、その骨は自然再生の象徴として特別大切なモノ、粗末にできないモノであり、さらに再生の象徴、再生の場にふさわしモノであったのではないかと考えます。
獣骨自体に縄文人は祭祀性を感じていたのだと考えます。
獣骨も貝と同じように特別な空間(遺構覆土層や地点貝層、貝層)に残されています。
これらの獣骨も人や遺構の死と再生に関わる祭祀の重要なアイテムとして活用されたと考えます。
獣骨も砕かれているものがほとんどです。
大膳野南貝塚では鹿頭骨列を除いて動物の骨を儀礼的に扱ったかもしれない事例はありません。砕かれた獣骨は動物自体を対象とした祭祀ではなく、人に関する祭祀に関連した遺物であると考えます。
大膳野南貝塚にはみられませんが、縄文遺跡で一般的にみられる獣骨を焼いて砕いてつくった焼骨は再生呪力が一段と強化されたモノであったと考えます。

3 土器破片
土器は硬く渋く食用に適さない堅果類を美味しい食べ物に変える呪術性を備えた道具です。そのままでは食べられないものを食べられるようにしてくれるという意味で、自然の恵みを享受するために不可欠な道具、生存に不可欠な道具です。
しかし土器はいつかは必ず壊れますから、その時に新しい土器を必ず作ります。
土器は壊れても必ず新しい土器をつくることができます。
つまり土器も貝や獣と同じく、自然の恵みを永続して享受できる象徴であり、再生の象徴でもあったと考えます。
縄文人は不用土器片を貝や獣骨と同じように再生の場の祭祀アイテムにしたと考えます。
用意した不用土器片を祭祀の場でさらに破壊して(細かく割って)、それを死に見立て、その死の裏(反対)にある再生を象徴したのではないかと想像します。
竪穴住居祉でも土坑でも幾つかの破片となった土器片が出土します。これは土器片をその場で割ってそこに撒いたことを示しています。土器片破壊と撒きが送り祭祀(死と再生の祭祀)では重要な活動であったと考えます。

4 学習課題の検討方向
貝、獣骨、土器破片が祭祀の基本アイテムとして使われていたことが判りました。
いずれもそのアイテムを加工する活動が祭祀活動そのものの一部であったと考えられます。
●貝…砕き土と混ぜて撒く、漆喰をつくり撒く・炉や床をつくる
●獣骨…撒く、焼いて砕いて撒く
●土器破片…割って撒く
アイテムを砕き土に返す活動が縄文人の祭祀活動の重要構成要素であり、その最大規模活動が貝塚築造ということになります。

アイテムを加工する活動(砕き土に返す活動)の分類や意味を究明することが今後の学習課題として重要であると考えます。

●貝…純貝層・混土貝層・混貝土層の違いの分類とその意味など。発掘調査報告書にくわしい情報があり、分析すれば興味ある結果が得られると感じられます。
●獣骨加工…そもそも出土する獣骨は全て破砕されたものであり、獣食してその結果生まれた生の骨を捨てた(投げた、置いた)ものではないという仮説を立証する必要があります。
獣骨出土は、その遺構の回りで獣食した結果生まれた骨ではなく、過去の獣食で生じた骨を砕いて(加工して)保存しておき、祭祀の際にその空間に撒いたように観察できるように感じられます。そのような観察(発掘調査報告書解読)が正しいか検証する必要があります。
発掘調査報告書の獣骨情報は詳細であり、かつ遺跡全体を悉皆的に調査しているので、詳しく分析すると獣骨加工状況の興味深い状況が浮かび上がる可能性が濃厚です。
●土器破片…発掘調査報告書のスケッチ情報や発掘状況写真から土器片の破壊の仕方が判れば、割って撒く活動の何らかの分類ができ、ひいては祭祀にかかわる有用情報が引き出せるかもしれません。(土器片破壊の方法…投げ込まれてその結果割れた(その後割った)のか、既に割った土器片をバラバラ投げ込んだのか。その違いが判る場合があり、その違いにより祭祀の性格が浮かび上がるかもしれません。)

今朝の花見川風景
この風景空間を散歩しているとき、この記事内容の思考が丸ごと生まれました。

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