2017年7月10日月曜日

西根遺跡出土祭祀用飾り弓の閲覧

千葉県教育委員会所蔵の西根遺跡出土飾り弓を閲覧しました。

1 西根遺跡出土縄文時代飾り弓

西根遺跡出土縄文時代飾り弓
千葉県教育委員会所蔵

西根遺跡出土縄文時代飾り弓
千葉県教育委員会所蔵

西根遺跡出土縄文時代飾り弓
千葉県教育委員会所蔵

西根遺跡出土縄文時代飾り弓
千葉県教育委員会所蔵

西根遺跡出土縄文時代飾り弓スケッチ
発掘調査報告書「印西市西根遺跡」から引用

発掘調査報告書では「杭」の検討はありませんが、飾り弓は漆関係資料の項で次の通り詳細に検討されています。

縄文時代飾り弓出土は千葉県ではじめてです。
飾り弓は芯持ちの丸木材(アジサイ属)を胎とし、全面に樹皮を巻き付けた上で、赤色漆をさらに全体にぬり重ねています。
樹皮素材はほぼ均等で平滑な表面を有する幅1㎝にも満たない帯状のものです。
赤色顔料は蛍光X線分析の結果によればベンガラ(赤色酸化鉄)と判断されます。
樺巻材の上にまずは全面に漆が塗布され、その上にベンガラ漆が1層塗られたことが観察できました。
炭素14年代測定結果では実年代に補正した値としてBC1890~1735年となっていて縄文時代後期の範囲に完全に収まり、発掘時の所見(加曽利B式土器期の遺物)を支持しています。

発掘調査報告書では飾り弓に漆が使われ、他に漆パレットとしての土器出土、土器補修に漆が使われていることなどの状況から、縄文時代西根遺跡付近で漆の木が豊富であったことが記述されています。
しかし、なぜ飾り弓が出土するのか、飾り弓は何に使われていたのかなどの意義(意味)についての言及はありません。

2 飾り弓の意義
赤く漆で染め上げた飾り弓ですから祭祀用の弓であったことは確実であると考えます。
飾り弓の近くで腕状枝イナウ(発掘調査報告書では「杭」)も出土しています。
また近くには土器第一集中点があり、その場所は獣骨集中出土域でもあります。

獣骨重量グラフと飾り弓出土地点

このような近傍同時代出土物から飾り弓は土器第1集中地点における祭祀で使われた祭祀用具であったと考えます。
具体的にはアイヌのイオマンテのような獣を送る儀式が行われ、その場で飾り弓が象徴的に使われたと推定します。腕状枝イナウもその時一緒に使われたと考えます。

イオマンテに類似する儀式の後、獣は火で焼かれて調理されて食されたと考えられます。
出土獣骨が全て焼かれて砕片になっているのでこのような推測が可能となります。

参考 出土獣骨
発掘調査報告書から引用

なお、獣骨には頭骨が少なく、また幼獣のものが多いという特徴があると記述されています。
頭骨が少ないのは、アイヌイオマンテと同じく頭骨だけ祭壇に飾ったからであり、焼いていないので残らなかったからであると考えられます。
幼獣の骨が多いは、アイヌが子クマを育て、そのクマをイオマンテで送るのと類似した事象があったと考えると納得することができます。

土器集中地点はイオマンテ類似祭祀が行われた場であり、飾り弓はその祭祀で使われた祭具であると考えます。

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参考

飾り弓出土地点

西根遺跡 獣骨重量グラフ


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