2017年8月29日火曜日

土器破壊(土器送り)のポジティブさ 西根遺跡のポジティブさ 土器塚学習8

土器塚学習を進めてきて、自分の考えが大いに変化しました。

精細な土器塚観察を行っている阿部芳郎さんの諸論文を読んで、土器塚、西根遺跡土器集中がトチの実など主食堅果類の収穫祭の跡であると気が付きました(仮説しました)。
学習した諸論文にはそのような仮説は全く書いてないのですが、自分が気が付いた(仮説した)ということです。

この仮説を持つことにより、土器破壊(土器送り)のポジティブさ、西根遺跡のポジティブさを強く感じるようになったのでメモしておきます。

土器破壊という土器送り(壊れた土器、持ち主がいなくなった土器を破壊することにより土器の精霊を土器から解放する行為)はこれまでネガティブな印象で捉えていました。

土器破壊という縄文時代土器送りの影響が現代まで伝わっている民俗の一つに、自宅から出棺する際の茶碗割りがあります。葬送とも結びついた民俗であり、自分にとってはネガティブな印象の知識になります。

土器破壊(土器送り)が行われる場所は、必ずそれにふさわしい空間そのものを送る場所でもあります。なにもない野原で土器送りをすることはあり得ません。
廃絶炉穴における土器送り、廃絶竪穴住居における土器送り、廃絶ミナトにおける土器送りなどの対応が必ず存在することが必然です。
このようにこれまで思考してきました。

ところが土器送り(土器破壊)が収穫祭の一環で行われた祭祀行為であると気が付くと、同じ事象が全てポジティブに捉えられるようになります。

廃用土器を破壊して土器の精霊を解放する行為があるならば、必ずやその背後に既にその廃用土器の代わりの新品土器が存在していることを意味します。廃用土器より大きくて高機能な土器に違いありません。
つまり土器破壊とはその土器以上の高品質土器の可能性のある新品土器が既につくられていて稼働していることを物語っています。
土器破壊とは「土器が破壊されてむなしい」というネガティブな連想ではなく、「新品土器が用意された」というポジティブな連想で捉えるべきものであるのです。

土器破壊(土器送り)が行われる廃絶施設(空間)についても同じことが言えます。
土器破壊(土器送り)が行われた廃絶炉穴は、別に新設炉穴が建設されたから古い炉穴を廃絶し、その祭祀として土器破壊(土器送り)をしたのです。
壊れた土器が出土する炉穴の背後には新設炉穴の活用と新品土器による食物加工調理活動が実在するのです。
廃絶竪穴住居における破壊土器出土も同じです。その出土情報から(故人に関連する新家族の)新竪穴住居と新品土器を使った主食加工調理活動の実在を読み取ることができるのです。
廃絶ミナトにおける破壊土器出土も(つまり西根遺跡も)、その出土情報から新設ミナトの活用と新品土器による堅果類主食化活動の実在を読み取ることができるのです。

捉えた事象は同じも、ネガティブな印象で語るのと、ポジティブな印象で語るのでは、ほとんど正反対の仮説になります。

西根遺跡(縄文時代)学習用作業仮説として「ミナト施設送りとしての土器送り・イオマンテ」を書いてきましたが、この表題をポジティブに説明し直すと、「廃絶ミナト送りとしての土器送りによる新ミナト設置のお祝いと収穫祭」ということになります。

西根遺跡は新たにミナトが設定された(生まれた)お祝いを兼ねた収穫祭が本質ですが、表面は廃絶ミナト送りや土器送りです。

西根遺跡の土器出土状況
「印西市西根遺跡-県道船橋印西線埋蔵文化財調査報告書-」(平成17年)から引用
この破壊土器と同じ数の新品土器が集落で既に使われていた

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